食品ロス削減 もったいないを行動に
2019年02月10日
食品ロスの削減に向けて、市民や飲食業界を巻き込んで「サルベージパーティー」「フードシェアリング」という取り組みが広がっている。余った食材の調理法を共有したり、食材を余らせた人と必要としている人を結び付けたりすることだ。食品ロスの4割は家庭から出る。地域で、家族で考えてみよう。
サルベージパーティーとは、海難事故から人や物資を救い出す「サルベージ」という言葉から、捨てられてしまう食材を救うとの意味が込められている。
パーティーでは余った食材を持ち寄り、シェフと調理法を考える。飲食業の企画・立案を手掛けていた平井巧さん(39)が、飲食業から出る食品ロスを「もったいない」と感じたことが発端となった。残った食材で作る賄い飯からヒントを得た。ロスを減らすこつは「難しく考え過ぎないで、楽しく新しい調理法を学び、習慣化することが大切」という。
フードシェアリングは、食べ物を分かち合うという意味がある。売れ残りを出したくない飲食店と格安な食材を求める消費者をつなぐスマートフォンのアプリも登場し、飲食店295軒、8万2000人の消費者が登録している。
行政も動く。富山県は「3015運動」を県民に呼び掛ける。3015は同県が誇る北アルプスの立山の標高(メートル)にちなんだ。運動は、①毎月30日と15日に冷蔵庫をチェックして食材を使い切る②宴会の開始後30分と終了前15分に食事を楽しむ時間を設定して食べ切る──という内容だ。
国会でも昨年12月、超党派による「食品ロス及びフードバンク支援を推進する議員連盟」が発足した。今国会で議員立法による「食品ロスの削減に関する法律案」の成立を目指す。
まだ食べられるのに捨てられる食品ロスは全国で646万トン。6割は食品産業や小売り、外食が占め、残り4割は家庭由来だ。国民1人当たりに換算すると1日に茶わん1杯分のご飯が捨てられていることになる。
国連加盟国が2030年までの達成を目指す「持続可能な開発目標」(SDGs)では、小売り・消費レベルで「世界全体の1人当たりの食料廃棄を半減させる」という目標を掲げている。国際社会の一員として、積極的に関わる必要がある。
全世界の科学者を対象としたジャパンプライズに選ばれた、米オハイオ州立大学特別栄誉教授のラタン・ラル氏は、各国政府は国連の場では決議に賛成するが、本国に戻ると実行しないという。「選挙を気にしない、長期視点を持つリーダーシップが欠かせない」と説く。
大量生産、大量消費、大量廃棄の悪循環の輪から抜け出すことが大事だ。飼料自給率の向上へ廃棄が出ても焼却せず、家畜の液状飼料として活用することも欠かせない。「もったいない」の気持ちを行動に移す時である。
サルベージパーティーとは、海難事故から人や物資を救い出す「サルベージ」という言葉から、捨てられてしまう食材を救うとの意味が込められている。
パーティーでは余った食材を持ち寄り、シェフと調理法を考える。飲食業の企画・立案を手掛けていた平井巧さん(39)が、飲食業から出る食品ロスを「もったいない」と感じたことが発端となった。残った食材で作る賄い飯からヒントを得た。ロスを減らすこつは「難しく考え過ぎないで、楽しく新しい調理法を学び、習慣化することが大切」という。
フードシェアリングは、食べ物を分かち合うという意味がある。売れ残りを出したくない飲食店と格安な食材を求める消費者をつなぐスマートフォンのアプリも登場し、飲食店295軒、8万2000人の消費者が登録している。
行政も動く。富山県は「3015運動」を県民に呼び掛ける。3015は同県が誇る北アルプスの立山の標高(メートル)にちなんだ。運動は、①毎月30日と15日に冷蔵庫をチェックして食材を使い切る②宴会の開始後30分と終了前15分に食事を楽しむ時間を設定して食べ切る──という内容だ。
国会でも昨年12月、超党派による「食品ロス及びフードバンク支援を推進する議員連盟」が発足した。今国会で議員立法による「食品ロスの削減に関する法律案」の成立を目指す。
まだ食べられるのに捨てられる食品ロスは全国で646万トン。6割は食品産業や小売り、外食が占め、残り4割は家庭由来だ。国民1人当たりに換算すると1日に茶わん1杯分のご飯が捨てられていることになる。
国連加盟国が2030年までの達成を目指す「持続可能な開発目標」(SDGs)では、小売り・消費レベルで「世界全体の1人当たりの食料廃棄を半減させる」という目標を掲げている。国際社会の一員として、積極的に関わる必要がある。
全世界の科学者を対象としたジャパンプライズに選ばれた、米オハイオ州立大学特別栄誉教授のラタン・ラル氏は、各国政府は国連の場では決議に賛成するが、本国に戻ると実行しないという。「選挙を気にしない、長期視点を持つリーダーシップが欠かせない」と説く。
大量生産、大量消費、大量廃棄の悪循環の輪から抜け出すことが大事だ。飼料自給率の向上へ廃棄が出ても焼却せず、家畜の液状飼料として活用することも欠かせない。「もったいない」の気持ちを行動に移す時である。
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農水省は15日、和牛の精液や受精卵の海外流出防止策などを話し合う検討会の初会合を開いた。家畜の遺伝資源の育成者権を巡り国内外の法制度がない中、国内での管理の徹底や不適切に流通した場合の厳しい取り締まりをどう担保するかが焦点。有識者からは新たな仕組みを提案する声も上がった。現場での管理実態なども聴取し、対応方針を取りまとめる。
2019年02月16日

気象データ活用 県域拠点 設置広がる 温暖化や被害対応 農家へ情報提供
地域ごとのより細かい気象データを蓄積することで、温暖化に対応した品種改良や気象災害などの被害軽減策の取りまとめを目指す「地域気候変動適応センター」の設置が各地で始まった。昨年12月に埼玉県が全国に先駆けて設置し、今年1月に滋賀県でも発足した。今後、長野県や静岡県でも設置が決まっており、取り組みが全国に広がる見通し。同センターは大学や地域の研究機関などと連携して情報収集や分析、適応策をまとめ、JAや農家、企業などに情報提供する。
埼玉県は、同センターの設置で県内各地の気象データを収集、分析したものを一元化する他、4月からインターネット上で公開する予定だ。同県は「農業分野では、水稲の白未熟粒の発生頻度や、予測される収量など、気象データを基に予測情報として提供できるのではないか」と話す。また、高温耐性品種の事例紹介などもしていく考えだ。
滋賀県では、気象データを生かし、高温に強い水稲「みずかがみ」の作付け拡大を推進していくことに加え、温暖化に一層適応した水稲の品種改良を進める。
この他、長野県では4月に「信州気候変動適応センター」(仮称)を設置。静岡県でも3月末に「静岡県気候変動適応センター」(仮称)の設置を予定する。同県は「県の研究所などから集めた情報を農業や漁業などの分野ごとに整理し発信していく」とする。
昨年末に成立した気候変動適応法を受けた取り組み。同法は、地球温暖化による農作物の品質低下や洪水など将来予測される被害の軽減、防止する適応計画を推進するための法律。2018年12月1日に施行した。環境省は各地に同センターの設置を推奨し、高温耐性の農作物品種の開発や普及、ハザードマップ作成などで温暖化への適応を促す。同省が気候変動影響評価を5年ごとに行い、その結果を基に改定を行う。
県域のセンターが収集した気象データや被害状況などを国立環境研究所(茨城県つくば市)の気候変動適応センターに、を一元化。同研究所は、各分野の研究機関と協力態勢を構築し、各地の県域のセンターに技術指導をする仕組みも整える。
2019年02月10日
ノウフクJAS新設 障害者雇用後押し 農水省来年度
農水省は、障害者が作った農産物について、新たな日本農林規格(JAS)を定めた。収穫や家畜の飼育など主要な生産工程に障害者が関わり、その取り組みを意味する言葉「ノウフク」を表示することが条件。障害者と連携して作った農産物や加工品のブランド価値を高め、障害者の就労先拡大や賃金向上、農家の労働力不足解消につなげる。
2019年02月15日

[未来人材] 26歳。夫は農家、栄養士の資格生かす 料理で地域おこし 井澤綾華さん 北海道栗山町
北海道栗山町の井澤綾華さん(26)は、地域おこし協力隊で同町の農業振興に携わりながら、管理栄養士の資格を生かし料理研究家としても活動する。レシピ監修やイベントなどを通じ、家庭で簡単に作れる料理を提案。2年前に農家に嫁いでからは、地元JAと料理教室を開くなど、身近な食の専門家として活躍の場を広げる。
出身は札幌市。栄養学を学んだ大学時代、サークルで農家を訪ね、「食卓を支える農業の魅力に気付いた」。1年間休学し、島根県に滞在。6次産業化など農業の支援に携わり、地域おこしのやりがいを実感した。
2016年に同町に移住し、地域おこし協力隊員に就任。学生の農業体験などを支援する。17年には活動を通じて知り合った孝宏さん(30)と結婚。長女の乃々華ちゃんが生まれた。
孝宏さんは、約17ヘクタールで野菜などを栽培する井澤農園の後継者。綾華さんは農園を手伝いながら、料理や地域おこしの活動を続けている。1月にホクレンなどが開いた道産乳製品のイベントでは、チーズなどを使ったオリジナルの料理を披露するステージを担当。調理のこつや食材の栄養を解説し、連日人気を集めた。
地元のJAそらち南の相談を受け、JA特産のトウモロコシ粉「コーングリッツ」の地産地消も後押しする。欧州などでよく食べられているが日本ではなじみが薄いため、家庭料理のレシピを提案。町内で料理教室を開いた。
将来の夢は、農園直営のレストランを開き、地域に人を呼び込むこと。「娘には料理を手伝ってもらおうかと思って。それともトラクターに乗るのかな」。楽しみが増えていく。(石川知世)
2019年02月16日
豚コレラ発生5カ月 181農場 監視を徹底
岐阜県での豚コレラの発生から5カ月。発生の拡大が収まらない中、感染経路の特定が急務の課題となっている。だが、ウイルスを持った野生イノシシ、と畜場を含む施設を通じた感染源などが想定されるものの、経路の特定には至っていない。そうした中、農水省は181の農場を監視対象にし、拡大を防止する狙い。感染拡大を食い止めるため、感染経路の早期の特定と、それに応じた対策が欠かせない。
感染経路では、野生イノシシがウイルスを拡散しているという見方は強い。農水省も両県へ防護柵設置などの助成を拡充しているが、野生イノシシがどうウイルスを広げたか、具体的なメカニズムは解明されていない。
愛知県では1例目の豊田市の養豚場と、同ウイルスに感染した野生イノシシが見つかった犬山市は30キロほど離れる。同省の疫学調査チームは、野生イノシシ以外の原因を含め調査している。
と畜場など発生農場が使った施設に人や車両が立ち入り、消毒も不十分だとウイルスが運ばれ、新たな感染が起きる恐れがある。愛知県の2例目は、先行して発生が確認されていた農場と同じと畜場を使っていた。
同省は感染経路究明に向けて「あらゆる可能性を想定している」(吉川貴盛農相)。疫学調査チームは岐阜、愛知両県に入り、感染経路などを調べており、近く結果をまとめる見通しだ。
監視対象の農場では、不安を抱えながら県への報告や出荷自粛を続けている。心のケアを含め、生産者へのきめ細かい対策が重要になっている。
2019年02月15日
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豚コレラ防疫 息の長い 手厚い支援を
何としても食い止めなければならない。豚コレラの感染が広がり養豚農家の緊張が続いている。防疫の徹底には資金や人員、時間がかかり、中長期的な支援は欠かせない。殺処分を余儀なくされた農家の苦しみに寄り添い、経営再開に向けた息の長い支援が求められている。
「仲間の誰もが精神的にも経営的にも限界の状況だ」。岐阜県養豚協会の吉野毅会長は指摘する。現場では、外部との接触は極力避け、感染拡大の恐怖と闘いながら、想定できる限りの防疫態勢を敷いている。
だが、資金不足からシャワールームなど高度な防疫施設を整備できない農家もいる。リスクを減らすには設備投資への支援に加え、施設に入る車両を一方通行にするなど工夫も求められる。衛生管理への支援は待ったなしだ。さらに吉野会長は「今、起きている現実を見てほしい。一日でも早くワクチンを使ってほしい」と要望する。
殺処分を余儀なくされた当該農家の中には、経営再開を目指す担い手がいる。欠かせないのは万全の補償体制だ。発生農場に対し、殺処分した豚の評価額を都道府県が算出し、国が手当金として補償するといった支援策はあるが、現場からは「雇用も含めた農場全体での評価額を算出してほしい」(愛知県の養豚関係者)、「まとまって補償金が出て収入としてみなされたら、税金が払えない」(発生農場の関係者)といった声が上がる。政府はこうした声に耳を傾け、柔軟に対応すべきである。
地域の理解も必要だ。発生した養豚農家は「経営を再開したい。だが、息の長い支えがなければ、立ち上がれない」と漏らす。周辺住民から経営再開に対し不安の声が出ている場合は、県や地元自治体、JAなどの関係機関が連携して地域に説明し、住民理解につなげる必要がある。殺処分に直面する農家の苦しみや不安に寄り添う対策が求められている。
畜産は、食料を供給するだけでなく、地域産業の一翼を担っている。ふんは良質な堆肥となり、耕種農家を支え、循環型の地域づくりに貢献している。副産物は皮革製品や医薬品にも活用されている。家畜の伝染病対策は農業だけにとどまらず、国民全体の問題として捉えるべきだ。
日本を訪れる外国人旅行者は年々増加し、4月からは外国人労働者を農業現場に受け入れる新たな制度が始まる。人の往来が増えれば、さまざまな家畜伝染病のリスクが増える。外国人との共生は重要だが、これまで以上の防疫強化が必要だ。現場での対策とともに、空港や港湾など水際での防疫をさらに強化し、国内へのウイルス侵入を防がねばならない。
養豚農家は感染の恐怖と闘っている。野生鳥獣の肉(ジビエ)をなりわいとする若者たちの経営にも深刻な影響が及ぶ。現場に寄り添う長期的な政策と心の支えが求められている。
2019年02月16日
政府備蓄米 需給安定へ推進加速を
低調だった政府備蓄米の取り組みが拡大してきた。生産調整見直し2年目となる2019年産は米政策の正念場だ。備蓄米は、飼料用米と並んで主食用米の需給を安定させる要となるだけに、産地の積極的な推進が求められる。
1月末に始まった19年産の備蓄米入札は、年間買い入れ枠20万9140トンに対し、計2回の累計落札量は約10万トン(47%)となった。18年産を下回る鈍い出足だが、初回で様子見をした主産地での落札が伸びた。最多の新潟(計2万トン)を含め、青森や福島、富山の4県で落札量が各1万トンを超えた。一方、県別枠の配分が3万トンと最多の山形や北海道が伸び悩むなど、15道県で配分された県別枠の2割に届かず、温度差が見られた。
近年、年間枠の全量が落札されたシーズンは、序盤で枠の大半が消化される傾向にある。だが19年産は落札が十分とはいえず、巻き返しが必要だ。
振り返れば、18年産は東北地方や新潟といった主産地が備蓄米の作付けをやめ、主食用米の増産に動いた。その結果、主食用米の作付面積は統計がある08年産以降、初の増加に転じた。生産量こそ作柄の低下で大幅増を免れたものの、こうした需給の不安要素は取り除かなければいけない。
需給安定に向けた好条件は、農水省が19年産から備蓄米入札の運用を改善したことだ。買い入れ枠の全量を、他県と競合することなく入札でき、価格面で有利な都道府県別優先枠を割り当てた。備蓄向けに落札された米の引き受け時期も、従来より前倒しし、産地の保管経費を抑えられるようにした。
落札価格は前年産より上げて60キロ当たり1万3000円台後半(税別)で、主食用米と変わらない水準となる。多収性品種で取り組めば、農家所得の向上が見込める。東日本の産地関係者は「19年産備蓄米の価格は、魅力的な水準に映る。当初は模様眺めをしていたが落札を進めている」と明かす。
備蓄米は、播種(はしゅ)前に米の取引価格が決まるため、稲作経営の見通しを立てやすい。19年産の落札実績は、22年産まで優先枠として維持する。
こうした利点の周知が欠かせない。農水省は米の主産県を中心にキャラバンを展開し、需要に応じた米生産と備蓄米の推進を呼び掛けている。JAが独自にちらしを作成して、てこ入れを図る産地もある。
19年産の備蓄米入札は、昨年末に発効した環太平洋連携協定(TPP)の国内対策として、買い入れ枠を18、19年度の輸入枠に相当する9000トンを上乗せした。TPPで輸入する量と同量の国産米を備蓄米として買い上げることで、国産米の需給緩和や価格低下を防げると政府は説明する。
主食用米の需給と農家の経営を安定させるには、官民挙げて備蓄米の年間枠を達成させることが先決となる。
2019年02月15日
バレンタインデー 広めよう 花贈りの文化
きょう2月14日はバレンタインデー。女性から男性に贈るチョコレートもいいけど、最近のトレンドは男性から女性に花を贈る「フラワーバレンタイン」。愛情や感謝の気持ちを相手に伝えるのに花はぴったりだ。消費増にもつながる。花贈りの文化をもっと広めよう。
欧米をはじめ世界的には、バレンタインデーは男性から女性に花を贈る習慣が多いとされる。日本でフラワーバレンタインが知られるようになったのは、花の生産者や卸、小売りでつくる花の国日本協議会が2011年に「男性の花贈り」キャンペーンを始めてからだ。
花き業界ぐるみのフラワーバレンタインの呼び掛けもあり、男性による花贈りの習慣が広がりつつある。
同協議会が昨年まとめた男女1000人(20~50代)の意識調査によると、過去1年間に贈り物で花を買った経験がある男性は42%で、3年前の3倍近い。過去の調査と比べ、花贈りが「楽しい」「わくわくする」と感じる男性が増え、照れくささや恥ずかしさを上回るようになった。一方、花を贈られた女性の8割以上が「すてきだ」「おしゃれだ」「(男性が)一段とかっこ良く見える」などと好意的に受け止めていた。
男女間で花を贈ったり、贈られたりという行動が、これまで以上に肯定的に受け止められ、市民権を得たと言えよう。
この潮流を、花き業界も消費拡大のチャンスと受け止める。日本農業新聞が昨年末、業界関係者に行った19年のトレンド調査では、花き消費拡大の“期待値”が最も高い物日はバレンタインデーだった。正月や盆など定着した物日利用は、伸びしろを見込めないというわけだ。
実際、小売店のフラワーバレンタイン向けの売り込みは年々、積極性を増している。大手チェーン店を中心に商品提案が活発だ。定番のバラに加え、ラナンキュラスやチューリップなど季節の洋花を提案したり、仕事帰りに手軽に持ち帰りやすい商品を前面に押し出したりして消費を喚起している。
業界はさらに、その先を見据える。本紙のトレンド調査でも明らかだが、19年のキーワードとして、週末の食卓や居間を花で飾る「ウイークエンドフラワー」や、職場に花を飾る「フラワービズ」が前年の調査結果を大きく上回った。生活スタイルや働き方を変えるための必須アイテムとして、花を売り込もうという戦略だ。
記念日の贈答用から日常生活、職場まで、花を使いたくなる場面はまだ多い。潤いや安らぎを花に求める消費者のニーズは高まっている。暮らしのさまざまな場面に、文字通り花を添えたくなるような商品提案を業界にはもっと期待したい。
もちろん、産地側からの積極的な提案や売り込みも欠かせない。作る人、売る人、贈る人、飾る人──。花贈りは、みんなを笑顔にする。
2019年02月14日
増える外国人事故 安全重視の労働環境を
国内で働く外国人労働者が146万人と過去最多を更新する中、農業現場では安全が置き去りになっている。4月からは改正出入国管理法(入管法)に基づく新たな受け入れが始まる。農業は全産業の中で最も危険な業種だけに、安全教育の徹底や心のケアなど働きやすい環境整備が急務である。
外国人の労災事故は多発している。法務省は2017年までの8年間で、18歳から44歳までの実習生ら計174人が事故や病気、自殺などで死亡したとする集計を出した。
農業現場では、16年度の1年間に耕種農業で57人、畜産で51人と計108人の実習生が事故に遭った(国際協力研修機構調べ)。過去には無免許で道路をトラクターで走行中、転落して亡くなったり、無免許でフォークリフトを運転し、重傷事故で長期入院したりした若者もいる。
生活上のトラブルで死に至るケースも発生している。畜産現場で働いていた中国人男性は入国後1年2カ月で心不全で亡くなった。日本の生活になじめず偏った食習慣が災いし、不眠が続いていたという。他にも、経営者と後輩実習生の板挟みになってストレスを抱え、自殺を図った中国人男性や、実習生同士の男女関係のもつれや仕事ができない悩みで、2度の自殺を試みたタイ人女性もいた。共通していたのは「孤立」だ。日頃から積極的に声を掛け合い、コミュニケーションを取るなど精神面のケアも求められている。
改正入管法に基づき、4月から新たに農業現場が受け入れる外国人材の9割は、技能実習の修了者で占める見込みだ。安全対策が不十分なまま受け入れが始まれば、こうした悲劇がさらに繰り返されることになる。
受け入れ側も問われている。法務省によると、17年に不正行為を通知された実習実施機関は183機関。最も多かったのが「賃金などの不払い」で136機関、「偽造文書などの行使・提供」「労働関係法令違反」と続いた。「農業・漁業関係」の不正行為は39機関と、繊維関係(94機関)に次いで多かった。旅券や在留カードを取り上げて返却しなかったり、通帳や印鑑を事務所で保管し、実習生が自由に賃金を引き出せないようにしたりしていた。
菅義偉官房長官は、改正入管法が成立した昨年12月8日、「外国人材を管理する」と発言した。足りないから外国から連れてきて「管理」し、余ったら帰せばいい──。人間ではなく労働力としか見ていない。自分が他国で息子や娘を働かせている親の立場だとしたらこの状況をどう思うだろう。
JAなどの事業者や雇用者は、労災保険の加入や安全対策の徹底、人権の尊重など労働環境の整備を急ぐべきだ。JA全中などでつくる「農業技能実習事業協議会」の果たす役割も大きい。多様性を認め、誰もが安全で働きやすい職場をつくることが求められている。
2019年02月13日
牛肉輸入急増 TPPの再協議を急げ
環太平洋連携協定(TPP)の再協議を急ぐべきだ。昨年末のTPP発効を受け、牛肉輸入は急増している。参加国からの1月の輸入量は3万トン超と前年同月を6割上回るハイペースだ。輸入急増に歯止めをかけるセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)は、離脱した米国の参加を前提にしており、機能を果たしていない。
TPPは日本農業にとって過去最大の市場開放となる。特に影響が懸念されている品目が、関税が38・5%から27・5%へ下がった牛肉だ。
財務省によると、1月のTPP参加国からの牛肉輸入量は、メキシコ、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアの4カ国産を中心に3万2885トンに上る。例年ならば、4カ国からの1月の輸入量は2万トン前後で推移しており、「近年にはない高い水準」(東京都内の商社)という。
問題は、肝心のSGが機能不全の状態であることだ。牛肉のSGの発動基準数量は、牛肉輸出大国である米国からの輸入を含めて設定された。ところが途中で米国がTPPから抜けたため、基準数量が実態と合わず、発動しない可能性が高い。
TPPには、米国の復帰が見込まれない場合、合意内容を見直すという再協議規定がある。米国と日本は近く、2国間による貿易協定交渉を本格化させる。まさに今が「復帰が見込まれない場合」で、発動基準数量の見直しに向けて再協議すべき時である。だが、日本政府は動く気配がない。
なぜか。それは米国をTPPに復帰させたいという思惑があるからだ。日本の交渉関係者は「米国抜きの合意内容に見直せば、米国の復帰の道を閉ざし、対日自由貿易協定(FTA)へと向かわせることにもなる」と強調する。
だが、生産現場への打撃を放置していいはずはない。何より、TPPを批判して離脱した米国が、TPPに復帰する保証はどこにもない。
問題は他にもある。「TPP枠」だ。日本が米国を含む12カ国を対象に設定した低関税輸入枠で、乳製品の場合は7万トン。既にニュージーランドやオーストラリアだけでこの枠を満たしてしまう。それとは別に、米国から2国間交渉で低関税の輸入枠を迫られる展開もあり得る。
TPP参加国は1月、東京都内で閣僚級の「TPP委員会」の初会合を開いた。議論したのは、新たな国が加盟する際のルール。日本はTPP再協議に手を付けないまま、国内農業をさらに窮地に陥れる加盟国拡大を急いでいる格好だ。
2月から欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も発効した。日本農業はかつてない自由化の真っただ中にいる。安倍晋三首相が「農家の不安にしっかり向き合う」と言うのであれば、TPP再協議に向けて汗をかくことこそ、政府の進むべき道である。
2019年02月11日
食品ロス削減 もったいないを行動に
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サルベージパーティーとは、海難事故から人や物資を救い出す「サルベージ」という言葉から、捨てられてしまう食材を救うとの意味が込められている。
パーティーでは余った食材を持ち寄り、シェフと調理法を考える。飲食業の企画・立案を手掛けていた平井巧さん(39)が、飲食業から出る食品ロスを「もったいない」と感じたことが発端となった。残った食材で作る賄い飯からヒントを得た。ロスを減らすこつは「難しく考え過ぎないで、楽しく新しい調理法を学び、習慣化することが大切」という。
フードシェアリングは、食べ物を分かち合うという意味がある。売れ残りを出したくない飲食店と格安な食材を求める消費者をつなぐスマートフォンのアプリも登場し、飲食店295軒、8万2000人の消費者が登録している。
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国会でも昨年12月、超党派による「食品ロス及びフードバンク支援を推進する議員連盟」が発足した。今国会で議員立法による「食品ロスの削減に関する法律案」の成立を目指す。
まだ食べられるのに捨てられる食品ロスは全国で646万トン。6割は食品産業や小売り、外食が占め、残り4割は家庭由来だ。国民1人当たりに換算すると1日に茶わん1杯分のご飯が捨てられていることになる。
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全世界の科学者を対象としたジャパンプライズに選ばれた、米オハイオ州立大学特別栄誉教授のラタン・ラル氏は、各国政府は国連の場では決議に賛成するが、本国に戻ると実行しないという。「選挙を気にしない、長期視点を持つリーダーシップが欠かせない」と説く。
大量生産、大量消費、大量廃棄の悪循環の輪から抜け出すことが大事だ。飼料自給率の向上へ廃棄が出ても焼却せず、家畜の液状飼料として活用することも欠かせない。「もったいない」の気持ちを行動に移す時である。
2019年02月10日
綱渡りの生乳需給 飲用上げ弾みに増産を
生乳需給は綱渡りが続いている。Jミルクは、2019年度の需給を予測し、前年度比0・9%増と4年ぶりの増産を見通した。だが、都府県の生産基盤弱体化に歯止めがかかっていない。4年ぶりの飲用乳価引き上げをてこに、官民挙げた着実な増産対策を進めるべきだ。
相次ぐ自由化で、酪農家の生産意欲に悪影響を及ぼさないか。今春には日米貿易協定交渉も待つ。国産乳製品への打撃は、徐々に出てくると見込まれ、需給にどう響くか注視したい。
こうした中で、Jミルクの生乳需給見通しは微増となった。北海道が昨秋の大地震の影響から立ち直る見込みが大きい。半面、都府県は減少幅が縮まってきたとはいえ、減産傾向が続く。需給見通しとセットで農水省は、来年度のバターと脱脂粉乳の輸入枠数量を発表した。
注目したいのは、バター2万トン(製品換算)と、1年前の当初枠に比べ7000トンと大幅に輸入を増やした点だ。需要が増えているためだが、今後も消費増が続くか不透明だ。生乳に換算すれば約24万7000トンと酪農産地、数県分の数量だ。それだけに国内の乳製品市況をはじめ、需給状況によって来年度の乳製品価格交渉にも影響する。
本年度は、都府県対策を重視した大手乳業メーカーが指定生乳生産者団体との価格交渉で、飲用向けを4年ぶりに引き上げた。一方で、加工向けは乳業によって対応は分かれたが、最終的に据え置きで決着した。
自由化に伴って乳製品の輸入は拡大していく。それに加えて今回のバター輸入枠の大幅拡大。会見で「バター輸入枠が大き過ぎないか」との指摘に、同省は「あくまで枠であり5、9月の時点で生産状況を見て見直しもあり得る」と応じた。
焦点は夏の気温と生乳生産の状況だ。改元絡みの10連休で学校給食向け牛乳の休止もあり、気温次第で一挙に加工向けが増える可能性もある。国は需給動向を精査し、輸入枠見直しも含めて迅速に対応するべきだ。
間違いないのは、9月の生乳需給が例年以上の綱渡りとなることだ。9月の道外移出量は前年同期比23%増の6万トン強を見通すが、輸送能力の限界に近い。昨秋の北海道地震の教訓は道と都府県の均衡ある酪農発展だったはずだ。都府県の生産底上げが欠かせない。
気になるのは、輸入枠発表時に示した同省の国内生乳生産の見通しがあまりにも楽観的なことだ。2歳未満の未経産牛の増頭などから、長期目標750万トンに向けて「順調に回復していく」とした。自由化が加速し、生産コストが上がる中で果たしてそうだろうか。
国は畜産クラスターや初妊牛導入対策などを拡充するが、償還金返済や家畜ふん尿処理の環境対応など課題も多い。中山間地域や家族経営にも光を当て、北海道と都府県のバランスある発展を見据えた酪農行政が求められている。
2019年02月09日
米大統領教書演説 対日強硬姿勢に備えよ
米国議会でのトランプ大統領の一般教書演説は一見、融和と協調の姿勢が強調されている。だが、注視すべきは通商交渉の行方で、関税の大統領権限強化に触れた。日米協議に言及しなかったとはいえ、農産物の市場開放を含めた今後の厳しい対日交渉に備えるべきだ。
演説内容を額面通りには受け取れない。1年前、一般教書演説では深入りしなかった通商問題を、直後に激しく動かしたからだ。制裁関税を“武器”に「ディール(取引)外交」を展開したことは記憶に新しい。
今回も「過去何十年にもわたる破滅的な通商政策を転換しなければならない」と強調した。まずは、米中通商協議の行方だ。期限の3月1日まで3週間余り。2月下旬の米朝首脳会談と絡め、中国の習近平国家主席と首脳会談を行う可能性も高い。ただ、一時休戦が成立しても、安全保障を絡めた経済覇権争いは収まらない。長期戦となるだろう。
通商政策で注意したいのは、演説の中で新法に言及した点だ。「互恵貿易法案」とも言うべき通商関連法案で、関税の決定権を全て大統領に移管する強硬策である。トランプ氏は米国の貿易赤字を諸悪の根源と見て、これを削減し、解消する手段として制裁関税の威力を強調している。
米中協議が一定に妥結すれば、次は対日交渉に焦点が移る。トランプ外交は“トップ決断”が特色で、訪日の機会は5月から6月にかけて2度あるとみられる。
一つは5月の新天皇即位での国賓としての招待。いま一つは、日本が議長国となる6月下旬の主要20カ国・地域(G20)首脳会議の時である。事前には、水面下も含め日米の通商閣僚による協議があるだろう。
トランプ氏の全ての関心は、来年11月の次期大統領選にある。支持を得るための国民的関心事は何か。「トランプ・カレンダー」と言われる政治日程のスケジュールは、大統領選から逆算して具体的に書き込まれている。この「トランプ・カレンダー」に照らせば、来年初頭には再選のかかった大統領選が事実上動きだす。
トランプ氏が日米貿易協定の交渉成果を有権者にアピールするには、今年中に議会の批准を終える必要がある。逆算すれば7月末までに合意、署名を目指すとの見方も出ている。
一方、安倍政権は今後の政局を左右する参院選を控えており、いずれにしても、6月から7月にかけてが交渉の大きなヤマ場となる。
相次ぐ自由化で、国内農業の生産基盤は一層の弱体化が懸念される。食料自給率は38%と危機的な状況だ。安倍晋三首相は、日米協議で国内農業生産に打撃を与える一切の妥協を排すべきだ。拙速な判断は、農業者の不安を増幅させ、今後の選挙にも重大な影響を与えることを肝に銘じるべきだ。
2019年02月08日
豚コレラ拡大 官民挙げて封じ込めを
最大級の警戒が必要だ。岐阜県に端を発した豚コレラは5府県に拡大し、養豚農家は危機的な状況を迎えている。感染源となる野生のイノシシを近づけないために、電気柵の確認や捕獲の強化など官民挙げた封じ込めが必須である。
一般的に豚コレラに感染したイノシシは、発症して5日ほどで死ぬ。だが、今回のウイルスは弱毒性で、感染しても症状が現れるまでに10日ほどかかり1カ月程度は生存できる。その間にウイルスが各地にばらまかれてしまった。
家畜伝染病に詳しい東京農工大学農学部の白井淳資教授によると、1972年に国内で発生した際の「神奈川株」と同程度の弱毒性という。「岐阜県内には中国人が多く、中国から違法に持ち込んだ感染した肉の残さを夜行性のイノシシが食べた可能性がある」とみる。イノシシの出産期と、春節で海外から観光客が多く訪れる時期が重なり、厳重警戒が必要だ。
まず電気柵の確認から始めてほしい。岐阜県豚コレラ有識者会議によると電気柵やワイヤメッシュの設置が不完全で、豚舎内や飼料置き場に野鳥や小動物の侵入が認められた農場があった。農場での防疫とは違い、野生のイノシシに対する国の対策マニュアルがなく、手探りの状況が続いている。
電気柵を扱うサージミヤワキの宮脇豊社長によると、侵入を防ぐには地上から20センチにワイヤを張ることが鍵という。飛び越えるのを恐れて高く張っているケースが多いが、「鼻先が触れるよう地をはうような高さに設置することが大事」と指摘する。草に触れやすいため、漏電しても電気を流せるエネルギー出力が大きいタイプが良く、豚舎の場合は柵を4、5段とし、ワイヤの強度を高める必要がある。イノシシは体をさらすのが苦手のため、くぼ地をなくし、柵の外側の草も刈り取って寄せ付けないことが肝心だ。
豚コレラは空気感染はせず、経口と接触によって広がる。白井教授によると対策は二つ。一つはイノシシと豚との接触を絶対に避けること。電気柵の適切な設置に加え、生息数を減らすための捕獲強化も求められる。
二つ目は感染がさらに広がった場合の対応だ。「これ以上広がれば、養豚経営は成り立たない。緊急ワクチンを使うことも視野に入れるべきだ。一斉に接種し、出なくなったらワクチンをやめて清浄国になった経緯がある」と提起する。
風評被害を防ぐことも肝要だ。豚コレラは豚やイノシシの病気であり、人に感染することはない。感染した豚の肉が市場に出回ることはなく、仮に食べても影響はないことを、業界挙げて発信すべきである。
豚コレラに加え、アフリカ豚コレラまで侵入したら日本の養豚は壊滅的な打撃となる。防疫対策を全国で徹底し、何としても拡大を食い止めなくてはならない。
2019年02月07日
国会論戦本格化 農の未来像 現場に示せ
4日から通常国会の予算委員会が始まり、論戦が本格化してきた。安倍晋三首相が語ってきた「事実に基づく丁寧な説明」とは程遠い。厚生労働省による毎月勤労統計の不正調査問題では、事実究明に後ろ向きな政府の姿勢が鮮明になっている。国会は、政治家が国民に語り掛ける場であることを忘れるべきではない。
毎月勤労統計の不正調査問題を巡り、野党は予算委に先立つ理事会で厚労省の前政策統括官の参考人招致を要求した。だが与党は拒否。安倍首相も招致の是非について「お答えのしようがない」とはぐらかした。政府・与党は、7日までに2018年度第2次補正予算案を成立させ、8日から19年度予算案の実質審議入りを目指すが、事実の究明をうやむやにしたまま審議入りを急ぐべきではない。
農業、農村は重大な局面を迎えている。かつてない農畜産物の自由化を行う環太平洋連携協定(TPP)、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が相次いで発効し、農家は今後の経営に不安を抱いている。さらに日米貿易協定で、トランプ大統領が強硬に圧力をかけてくるのは間違いない。
12年12月の第2次安倍内閣発足以降、安倍首相は成長戦略の“一丁目一番地”として農業の規制改革を断行し、農協組織の在り方にメスを入れ、米の生産調整なども見直した。官邸主導で強引に改革を進めたことで先行きが見えず、現場は混乱している。
農林中金総合研究所は、政府の「農業競争力強化プログラム」に基づく農業改革関連法の運用状況を検証し、業界再編は必ずしも農家の所得向上につながっていないと断じた。
メガFTA(自由貿易協定)の時代に農家や産地はどう立ち向かえばいいのか。規模拡大や競争力強化に傾斜した農政をどう軌道修正すべきか。生産基盤の弱体化をどう克服し、低迷する食料自給率を高める道筋をどう描くのか──。国会の場で説明する責任がある。
本来なら、農政検証の場となる食料・農業・農村基本計画の見直しが始まっている頃だ。1月末に農相が有識者らでつくる審議会に諮問し、約1年かけて議論するのが通例だった。だが農水省は議論の開始を今秋に先送りし、農家らの意見聴取を先に始めることとした。異例の段取りとも言える。
安倍首相は、今国会の施政方針演説で「平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を共に切り開いていこう」と語った。それならば基本計画見直しを農政の主テーマに掲げ、与野党が論戦を繰り広げるべきだ。
春には統一地方選、夏に参院選がある。衆院選もあるかもしれない。高齢化に伴う労力不足に加え、未曽有の災害や貿易自由化が農家を直撃している。安倍首相はじめ与野党の議員は、審議を通じて農の未来像を示すことが必要だ。
2019年02月06日