牛肉輸入急増 TPPの再協議を急げ

 環太平洋連携協定(TPP)の再協議を急ぐべきだ。昨年末のTPP発効を受け、牛肉輸入は急増している。参加国からの1月の輸入量は3万トン超と前年同月を6割上回るハイペースだ。輸入急増に歯止めをかけるセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)は、離脱した米国の参加を前提にしており、機能を果たしていない。

 TPPは日本農業にとって過去最大の市場開放となる。特に影響が懸念されている品目が、関税が38・5%から27・5%へ下がった牛肉だ。

 財務省によると、1月のTPP参加国からの牛肉輸入量は、メキシコ、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアの4カ国産を中心に3万2885トンに上る。例年ならば、4カ国からの1月の輸入量は2万トン前後で推移しており、「近年にはない高い水準」(東京都内の商社)という。

 問題は、肝心のSGが機能不全の状態であることだ。牛肉のSGの発動基準数量は、牛肉輸出大国である米国からの輸入を含めて設定された。ところが途中で米国がTPPから抜けたため、基準数量が実態と合わず、発動しない可能性が高い。

 TPPには、米国の復帰が見込まれない場合、合意内容を見直すという再協議規定がある。米国と日本は近く、2国間による貿易協定交渉を本格化させる。まさに今が「復帰が見込まれない場合」で、発動基準数量の見直しに向けて再協議すべき時である。だが、日本政府は動く気配がない。

 なぜか。それは米国をTPPに復帰させたいという思惑があるからだ。日本の交渉関係者は「米国抜きの合意内容に見直せば、米国の復帰の道を閉ざし、対日自由貿易協定(FTA)へと向かわせることにもなる」と強調する。

 だが、生産現場への打撃を放置していいはずはない。何より、TPPを批判して離脱した米国が、TPPに復帰する保証はどこにもない。

 問題は他にもある。「TPP枠」だ。日本が米国を含む12カ国を対象に設定した低関税輸入枠で、乳製品の場合は7万トン。既にニュージーランドやオーストラリアだけでこの枠を満たしてしまう。それとは別に、米国から2国間交渉で低関税の輸入枠を迫られる展開もあり得る。

 TPP参加国は1月、東京都内で閣僚級の「TPP委員会」の初会合を開いた。議論したのは、新たな国が加盟する際のルール。日本はTPP再協議に手を付けないまま、国内農業をさらに窮地に陥れる加盟国拡大を急いでいる格好だ。

 2月から欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も発効した。日本農業はかつてない自由化の真っただ中にいる。安倍晋三首相が「農家の不安にしっかり向き合う」と言うのであれば、TPP再協議に向けて汗をかくことこそ、政府の進むべき道である。

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