増える外国人事故 安全重視の労働環境を

 国内で働く外国人労働者が146万人と過去最多を更新する中、農業現場では安全が置き去りになっている。4月からは改正出入国管理法(入管法)に基づく新たな受け入れが始まる。農業は全産業の中で最も危険な業種だけに、安全教育の徹底や心のケアなど働きやすい環境整備が急務である。

 外国人の労災事故は多発している。法務省は2017年までの8年間で、18歳から44歳までの実習生ら計174人が事故や病気、自殺などで死亡したとする集計を出した。

 農業現場では、16年度の1年間に耕種農業で57人、畜産で51人と計108人の実習生が事故に遭った(国際協力研修機構調べ)。過去には無免許で道路をトラクターで走行中、転落して亡くなったり、無免許でフォークリフトを運転し、重傷事故で長期入院したりした若者もいる。

 生活上のトラブルで死に至るケースも発生している。畜産現場で働いていた中国人男性は入国後1年2カ月で心不全で亡くなった。日本の生活になじめず偏った食習慣が災いし、不眠が続いていたという。他にも、経営者と後輩実習生の板挟みになってストレスを抱え、自殺を図った中国人男性や、実習生同士の男女関係のもつれや仕事ができない悩みで、2度の自殺を試みたタイ人女性もいた。共通していたのは「孤立」だ。日頃から積極的に声を掛け合い、コミュニケーションを取るなど精神面のケアも求められている。

 改正入管法に基づき、4月から新たに農業現場が受け入れる外国人材の9割は、技能実習の修了者で占める見込みだ。安全対策が不十分なまま受け入れが始まれば、こうした悲劇がさらに繰り返されることになる。

 受け入れ側も問われている。法務省によると、17年に不正行為を通知された実習実施機関は183機関。最も多かったのが「賃金などの不払い」で136機関、「偽造文書などの行使・提供」「労働関係法令違反」と続いた。「農業・漁業関係」の不正行為は39機関と、繊維関係(94機関)に次いで多かった。旅券や在留カードを取り上げて返却しなかったり、通帳や印鑑を事務所で保管し、実習生が自由に賃金を引き出せないようにしたりしていた。

 菅義偉官房長官は、改正入管法が成立した昨年12月8日、「外国人材を管理する」と発言した。足りないから外国から連れてきて「管理」し、余ったら帰せばいい──。人間ではなく労働力としか見ていない。自分が他国で息子や娘を働かせている親の立場だとしたらこの状況をどう思うだろう。

 JAなどの事業者や雇用者は、労災保険の加入や安全対策の徹底、人権の尊重など労働環境の整備を急ぐべきだ。JA全中などでつくる「農業技能実習事業協議会」の果たす役割も大きい。多様性を認め、誰もが安全で働きやすい職場をつくることが求められている。 

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