[達人列伝](81) 赤果肉リンゴ 長野県中野市・吉家 一雄さん(62) 甘さと色 改良で両立 栄養豊富 写真映えも魅力

収穫した赤果肉リンゴを園地で手にする吉家さん(長野県中野市で)

 長野県で、30年にわたり果肉が赤いリンゴの育成に力を注いでいるのが、中野市の果樹農家、吉家一雄さん(62)だ。鮮やかな果肉が目を引く外観だけでなく、味にこだわり育種に取り組む。国内外の品種を取り寄せ、現在園地では5000種もの赤果肉リンゴの実生を試験的に栽培。5種は品種登録され、大学や研究機関からも注目されている。

 吉家さんが、赤果肉リンゴと出合ったのは、県農業大学校での学生時代。当時は観賞用だったが、その果肉の美しさに驚き「このリンゴがおいしかったら絶対に人気が出る」と直感した。就農後、通常のリンゴ作りと並行して、赤果肉の育種を試し続けた。

 1990年ごろから本格的に品種改良に着手した。94年に、米国原産の加工用リンゴ「ピンクパール」と「紅玉」を交配し、約5年かけて結実。良好に着色したものの一つが、現在まで続く「いろどり」だ。この母種となる「いろどり」に「ふじ」を掛けたのが、「なかの真紅(しんく)」「炎舞(えんぶ)」、「ムーンルージュ」「冬彩華(とうさいか)」の4種。さらに「いろどり」と「王林」を掛けた「なかののきらめき」がある。「冬彩華」を除く5種は2018年5月、農水省に品種登録が認められた。

 「赤果肉は酸っぱい」という固定概念を持たれないよう、爽やかな甘味の品種を全国区で販売。やや酸味の強いものは、優先的に市内販売や加工用に向けるなど、普及方法にも気を配る。吉家さんは「この6種を親にして、次の品種へつなげていく」と意欲を語る。目指すのは「ふじ」のように、誰もが知る品種だ。

 園地には、欧州、オセアニアなど世界中から農家、研究者らが視察に訪れる。興味を示した料理人には「直接来て食べて」と誘い、その意見を育種に生かす。「オープンなやり方が、客観的な味の判断に役立ち、情報交換の場にもなる」と話す。

 吉家さんは「赤果肉は栄養成分も豊かで、食卓に華を添える。話題の写真映えも強み」と、その潜在力にほれ込む。自身の農園では、現在7対3の割合で白果肉のリンゴの出荷が多いが、赤果肉の引き合いが強まり、1、2年のうちに逆転すると見込む。「世界で新品種が発表されると、悔しさよりわくわくする」と、熱意は増すばかりだ。(江口和裕)
 

経営メモ


 園地1.8ヘクタールでリンゴを、0.7ヘクタールで桃を栽培。作業の省力化に努め、母親と妻の家族労働力だけで効率経営を実現している。
 

私のこだわり


 「まず自分が楽しむ。すると人が楽しんでくれる。吸っては吐く呼吸と一緒で、与えることで与えられるものがある。地域の農家や若い挑戦者に、垣根なくノウハウを伝えたい」 
 

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