日本農業のグローバル化 知恵結集し輸出促せ 木之内農園会長 木之内均

木之内均氏

 日本社会は今、あらゆる分野のグローバル化について騒がれている。しかし、農業分野ではどうだろうか。

 農水省の輸出促進対策などもあり、多くの日本の農産物や加工品が海を渡り、世界各地で日本食ブームを巻き起こしている。輸出対策が始まる前に、私は日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査員として、東南アジア各国を回ったことがあるが、その頃は、日本の農産物を海外で販売することなど、考えもしなかった。

 だが、実際に海外諸国へ行ってみると、鳥取県の梨や青森県のリンゴが既に輸出を成功させており、高い評価を受けていた。

 当時は牛海綿状脳症(BSE)のため輸出できなかったが、和牛の肉は各国から要望があり、オーストラリア産「WAGYU」が知名度を伸ばしていた。
 

高評価に可能性


 私はこの現象に驚いたと同時に、日本農業の可能性の大きさに、夢を感じずにはいられなかった。ところが日本の農業界では、まだ海外に目を向ける人はほとんどいない状況だった。

 農業は大地に足をつけ、日々こつこつと動植物の世話をすることから始まる。日本の農村は、まさしく江戸時代の鎖国状態のようだった。

 あれから十数年、農水省の輸出促進策の効果もあり、今では日本の農産物が世界に通用することを、多くの人々が認識する時代となった。

 だが、このことが日本の農業者や産地を本当に潤しているのだろうか。私にはそう見えない。

 私が会長を務める木之内農園を含めて、いくつかの農業法人や若手農家の中には海外進出を模索している人がいることは確かである。しかし、それは点にとどまる。

 日本農業のように島国で閉ざされた所で育った個人や小さな法人経営体では、現実として海外進出のリスクや投資に耐えられるだけの体力を持つ経営体は、ごく一部にすぎない。

 資金もさることながら、言葉や人種、宗教や文化の違いを乗り越えて、海外で本格的に農業ビジネスを展開できる経営体は無いと言っても過言ではない。
 

技術は世界水準


 私は若い頃にブラジルで1年以上過ごし、その後も多くの国で農業に関わる仕事をしてきた。つい先日も米国のフロリダで開かれた米国イチゴ学会に参加した。

 世界の農業者や研究者、農業関連企業の方と話をすると、全員が世界の市場を見据えた上で、自分の事業の進め方を考えている。日本のように、国内市場を中心に考えている農業とは全く異なっている。

 日本農業は、島国で狭い耕地や四季の変化を持続的に利用し、高温多雨なモンスーン気候の中で繊細な営農技術を培ってきた。さらに、世界で最も高品質で安定的な生産ができる技術も編み出してきた。

 生産現場が育んできたこの技術と、至れり尽くせりの機械や資材メーカーの技術、そして流通やマーケティング。全ての業界が協力して日本の農業と農畜産物のプラットホームを整え、世界に向けて貢献することこそが、日本農業の本当のグローバル化であり、求められる道筋ではないかと感じてならない。


きのうち・ひとし 1961年神奈川県生まれ。九州東海大学農学部卒業後、熊本県阿蘇で新規参入。(有)木之内農園、(株)花の海の経営の傍ら、東海大学教授、熊本県教育委員を務め若手育成に力を入れる。著書に『大地への夢』。 
 

おすすめ記事

論点の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは