米の品種多様化 販路確保し手取り増を

 「コシヒカリ」を中心とした流れに変化が生まれている。米相場の大幅下落から5年の間に、売り先の確保に向けて多様な品種の導入が相次いでいる。契約先を意識した業務用の多収品種、品質アップを目指す温暖化対応品種、地元のファンをつかむ地域限定品種など、生産者の手取り増につながる重要な取り組みだ。

 「コシヒカリ」は、40年ほど前に品種別作付け割合が1位となって以来、トップを独走してきた。おいしい米の代名詞として強いブランド力を持ち、相場が低迷した時でも、他の品種と比べて下げ幅が小さく、頼りになる品種として産地から根強い支持を得てきた。現在も、検査数量ベースで3割を占めるトップ品種だが、米相場が大暴落した5年ほど前から他品種に切り替える動きが広がり始めている。

 主産地で活発なのが、外食などの需要を狙った業務用多収品種。代表格の「あきだわら」は、新潟県や富山県などの「コシヒカリ」産地を中心に5年前から作付けが進み、3倍に増えた。「萌(も)えみのり」も宮城県や秋田県など東北を中心に作付けが倍増した。産地は「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」を基幹品種としながら、多角化の一環として拡大してきた。福島県の「天のつぶ」は、収量の多さを魅力と感じた生産者が積極的に作付けを拡大、3年前から急増している。

 生産者は、事前契約による売り先確保と多収による10アール当たりの手取り増を期待する。実需も、多収によって単価を抑えた米を確保できるのが魅力だ。

 温暖化対応品種も、多様化が進む。2010年夏の猛暑で高温障害が出たことをきっかけに、代表格の「にこまる」の作付けが西日本を中心に急増したが、ここ数年は九州で「なつほのか」、中国で「恋の予感」など新たな品種が次々と登場している。

 中でも、神奈川県を中心に栽培する「はるみ」は、耐暑性だけでなく食味の良さが加わり、デビューからわずか5年で県のトップ品種に急成長。直売所を中心に販売されている地元密着の地域品種だ。特A米効果もあるが、地元でしか手に入らないことも魅力となった。

 埼玉県の「彩のきずな」も耐暑性をきっかけに導入したが、食味の良さが加わり、地元のリピーターが増えた。「ミルキークイーン」も、低アミロースのもちもち感が病みつきとなった固定ファンが多く、売れ筋品種第2位という直売所が多い。前回の相場安で見直され、検査数量が再び伸びている。

 業務用だけでなく、地元消費者も含め、買い手を意識した品種の多様化は、産地の米戦略としては大きな変化だ。事前契約や契約栽培などによる販路の確保は、相場が変動するたびに中断する苦い歴史はあるが、今度こそ息の長い取り組みとすべきである。 
 

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