豪産「Wagyu」子牛 生体輸入 日本で肥育 「国産」ブランド販売

 食肉メーカーなどがオーストラリアから輸入した子牛を日本で約15カ月肥育し、「国産牛」としてブランド販売する動きが広まってきた。同国産「Wagyu」の血筋を引く。交雑種(F1)より高いが、和牛より低い価格を想定し、生産量が減る国産牛肉の代替として提案する戦略だ。環太平洋連携協定(TPP)発効で生体牛輸入の関税が段階的に下がり16年目に撤廃されるため、こうした取り組みが増える見込みだ。(鈴木薫子)
 

TPP発効で拡大も


 食肉メーカー最大手の日本ハム(大阪市)は今春から出荷する。同国から300キロ程度に育った子牛を同社のグループ会社が輸入。「Wagyu」の純粋種と、肉質が良いアンガス種を交配させた牛で、同国では「Wagyu」の交配割合が50%以上の場合、「Wagyu」に分類される。

 船で輸送後、福岡県内の指定農場で15、16カ月間肥育。和牛と同じ飼料を給餌し、さしを入れる。九州の食肉センターでと畜後、日本ハムが販売する。

 肉は「国産牛 肉専用種」のブランド名で販売する。国内での飼育期間が海外より長ければ「国産牛」と表示できる。同社は消費者が求めやすい価格帯の国産牛肉として売り込む姿勢だ。

 同様の取り組みをする食品卸のマルイチ産商(長野市)は昨年6月から、「信州白樺(しらかば)若牛」のブランドで販売。県内のスーパーなどへ卸す。首都圏での販路拡大を狙い、今月中旬に千葉市で開かれた食品展示会でPRし、注目を集めた。和牛とF1の中間の価格帯を目指しているという。同社は商社を通して、年間250~300頭を輸入する。

 背景には、テーブルミートとして一般的な国産乳用去勢牛の生産量が減っていることがある。酪農家で雌雄判別精液の利用が進み、2017年度は5万8000トンと、6年連続で減少した。

 国内の子牛相場の高騰もあり、オーストラリアからの導入は生産費を抑えられ、東京都内の流通業者は「国産F1子牛より1割安い」と指摘する。

 同国との経済連携協定(EPA)で現在は、300キロ以下が1頭3万600円、その他は同5万1000円の関税が課せられている。TPP発効で生体牛輸入にかかる関税が16年目に撤廃されるため、仕入れコストが一段と下がる。

 日本家畜輸出入協議会によると、今年度(18年4月~19年1月)の肥育用もと牛の輸入頭数は1万2696頭。全て同国からで、17年度通年を既に13%上回っている。
 

解説 基盤対策 検証十分に


 オーストラリアから子牛を生体輸入し、日本で肥育する動きの背景には、国内の子牛不足がある。国産牛のF1と乳用去勢牛の減少が著しいことから、食肉メーカーなどが調達先を海外に伸ばしている。国内の生産基盤強化に最優先で取り組むべきだ。

 2018年に全国の家畜市場で取引された和牛子牛の頭数は6年ぶりに増えた。一方で、F1子牛や乳用種初生雄牛の頭数は減り続けている。

 繁殖農家の高齢化で大幅な増頭は難しく、和牛や乳用後継牛の確保を優先する傾向も重なっている。F1子牛などの相場は5年前の約2倍に高騰し、肥育農家の赤字要因となっている。

 同国産子牛の輸入は食肉メーカーが主導し、最近は、生産現場にも広がってきた。農家にとって生産コスト削減が期待できる。ただ、子牛の調達を海外に頼る点について、国内の畜産振興の面では評価が割れる部分がある。

 TPP発効は生体牛の輸入増加のきっかけとなり得る。国や産地は課題をいま一度洗い出した上で、生産基盤の立て直しに必要な手立てが十分か検証すべきだ。 
 

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