よそ者目線でJAとタッグ 協力隊が新風 農家、特産を発信 イベント企画も

直売所を“よそ者目線”で盛り上げる杉原さん(中)と応援する農家、JA職員(宮崎県川南町で)

 農山村に夢を描き、奮闘する地域おこし協力隊員を仲間としてJAが受け入れる動きが出てきた。農家の取材や特産品の発信、祭りの企画など多彩な面で両者がタッグを組み、地域活動に取り組むことで、交流が芽生えたりイベントが盛り上がったりと相乗効果が発揮される。新たな目線で地域を見つめる隊員を「地域が明るくなる」「刺激になる」などと前向きに受け止め、応援する。
 

「明るくなる」「若者に刺激」

 
 宮崎県JA尾鈴の直売所「産直おすず村」。地域おこし協力隊の杉原千聖さん(26)は、元気いっぱいに農家を取材する。神戸市出身の杉原さん。任務は同直売所を盛り上げること。JA職員や農家の協力を得て、多彩な情報発信やイベント企画などに励む。「野菜も肉も感動するおいしさ。移住してよかった」と実感する。

 25歳まで関西の大手企業の会社員だった。飲み会が多く終電で帰るなど、仕事に忙殺される日々。自分らしいライフスタイルを実現したいとの思いが募った。サーフィンが趣味の杉原さんは昨年6月、海が近く自然豊かな川南町に協力隊員として飛び込んだ。

 カメラを片手に30人近く取材を重ねた。野菜や地域への思いを聞いてインターネット交流サイト(SNS)で発信し、映像にもまとめる。1月までは杉原さんの担当で、現在はJA組織広報課の渡邊榮一課長に付き添ってもらっていた。

 移住して一番驚いたのは、農家とJA職員の距離の近さだ。杉原さんは「取材する農家が全員、渡邊課長を知っているので、めっちゃ驚いた。移住前までJAのことをよく知らなかったけれど、うちのJAは農家との絆が強い」と感じる。

 移住前に比べて収入は半分になったが、ガソリン代以外は支出がほぼないため、貯金が増えた。海までは車で5分。毎日サーフィンができて、幸せを実感できる。スムージーの試作や料理教室などイベントも手掛け、手応えも感じる。当初、移住に反対していた両親も、今では杉原さんが毎月送る野菜や肉など特産品を心待ちにしているという。

 同じく担当だったJA資材課の河野正樹係長は「自分から積極的に発言、企画する姿勢は立派。JA職員や地域の若者たちの刺激になるし、直売所が明るくなった」と成長を見守る。

 杉原さんから見ると、地域にはもどかしく思うことも少なくない。例えば地域の団体間の連携。「JAや観光協会、役場、漁協など地域のたくさんの組織が壁をなくせば、課題はもっとクリアできる」と言う。今後は他の協力隊員と協力し、組織の垣根を越えた地域おこしを目指す。

 JAでは協力隊という新風を続々と受け入れ、仲間として育んでいる。2月から協力隊の“卒業生”を広報担当として採用。3月には新たな隊員もJA直売所に迎え入れる。渡邊課長は「組織の壁を感じていない隊員は、地域をごちゃまぜにする存在。うまく歯車が回れば、いろいろな可能性が見えてくる」と考える。

 鳥取県智頭町の県立智頭農林高校で、地域コーディネートを担う協力隊員の中野晋一さん(31)は、JA鳥取いなば智頭支店とタッグを組み、祭りを企画した。大阪府出身の中野さんは、JAが何をするところか知らなかったが、JA職員と接して考えが変わった。「JAは高校生を応援してくれる。今後は高校生の就農支援も一緒に進めたい」と強調する。

 三重県のJA鳥羽志摩は、昨年2月から志摩市の協力隊の活動支援業務を委託され、イチゴの営農指導などを担う。JAの前田長弘理事長は「地域ぐるみで応援していく。まずは農業の楽しさ、やりがいを知ってもらえるようバックアップし、地域活動にも参画してもらう。一緒に学んでいきたい」と前を見据える。

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