盆栽 窃盗標的に 海外人気高く 産地警戒 「わが子同然」 生産者無念

盗まれた樹齢約400年の盆栽「真柏」(飯村さん提供)

盗まれた盆栽が置かれていた場所を見つめる飯村さん(埼玉県川口市で)

 盆栽が狙われている。埼玉県川口市の盆栽店「喜楽園」で1月中旬、樹齢約400年の盆栽など7鉢が盗まれたが、犯人は見つかっていない。海外メディアが相次いで報道し、店関係者のインターネット交流サイト(SNS)には世界中から1000件近くの反響が届くなど、海外での盆栽人気の高さが図らずも浮き彫りとなっている。他産地の農家も不安を募らせる。
 

欧米メディア報道で 反響大


 「喜楽園」では1月12日夜から翌13日朝にかけ、店の敷地内に置かれていた盆栽7鉢が盗まれた。中でも樹齢約400年で高さ85センチ、幅60センチのヒノキ科の「真柏(しんぱく)」は過去に盆栽展で入選するなど、愛好家には知られた存在だった。

 喜楽園の代表で、JAさいたま理事の飯村誠史さん(53)によると「700万円以上の価値はある」という。他に同じ品種3鉢、マツ科の五葉松が3鉢盗まれた。当時は、敷地内は施錠などがされておらず、誰でも出入り可能だったという。

 飯村さんが110番通報。埼玉県警武南警察署は窃盗事件として捜査を進めているが、犯人は見つかっていない。

 同市やさいたま市の盆栽店では、盗難事件が昨秋から相次いでいる。いずれも貴重な品ばかり盗まれるなど、関係者の間では、目利きによる犯行との見方が強まる。

 一連の事件を受け、埼玉県も警戒を強める。3月11日にさいたま市で、花植木の生産者や造園業者などが参加する研修会で、県警が一連の事件と被害防止対策について説明する予定だ。

 財務省の貿易統計によると、2018年の盆栽を含めた植木などの輸出額は121億円。17年の126億円に比べて5%減ったものの、16年の80億円を50%超上回る増加基調で、海外の盆栽人気を裏付けている。

 こうした中、スペインのEFE通信や英国のBBC、米国のCNNやニューヨークタイムズなどが喜楽園での盗難事件を相次いで報道。飯村さん家族が、SNSのフェイスブックに「私にも園にも思いの深い盆栽」「わが子のように育ててきた」と発信。手入れが必要なことなどもつづり、返還を強く求めた。

 飯村さんの盆栽への愛情は海外メディアの記者の心に響く。自国で報道したEFE通信東京支局のノラ・オリベ記者は「スペイン人は、盆栽は日本のシンボルの一つだと思っている。木の状況を心配していた飯村さんの姿は尊敬に値する」と話す。ニューヨークタイムズ東京支局も「盆栽は海外の人から見れば新鮮。盗まれたのがつらいという飯村さんの姿は、読者の感情に訴えるものだ」とみる。

 一連の報道が影響したのか、飯村さん個人のフェイスブックには1000件を超える反響があり、慰めのコメントが多く寄せられる。飯村さんは「海外から反響を頂いたのはありがたい。犯人は、盆栽を返してほしい」と訴えている。

 他の盆栽産地は神経をとがらせる。ある生産者は「過去15年以上盗難被害に遭っていないが、いつ自分の産地も狙われるか分からない」と不安な日々を過ごす。

 また、報道を通じて犯人に産地の情報が渡ってしまうことも恐れている。輸出が広がり、世界的に注目が集まる中、盆栽をPRして売り出したいが「注目を集めると、産地が狙われるかもしれない」とジレンマを抱える。

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