ワクチン餌の使用 衛生管理の維持も重要

 岐阜県で野生イノシシに豚コレラへの免疫を付けるワクチン餌の使用が、25日から始まる。国内で初めての対策で、産地にとって緊張感が強いられる作業となる。発生から半年が過ぎ、封じ込めは長期戦を覚悟しなくてはならない。ワクチンと併せ、農場での衛生管理を維持することが重要だ。

 豚コレラの発生が止まらない。7日には岐阜県山県市の養豚場で11例目が確認された。イノシシへのワクチン餌の使用は少なくとも、来年2月まで続ける見通しだが、心身共に打撃を受けている農家の負担がこれ以上、増えることのないような対策を求めたい。

 岐阜県では、県南部の山間部を中心とした18市町の900カ所、約1200平方キロにワクチン餌を設置する。1年を3期間に分けて各期で2回、計6回実施する計画だ。愛知県も3月下旬から、60カ所で3期6回の設置をする計画だ。

 1期目は、5、6月の出産シーズンに間に合わせるため3~5月に行う。妊娠中のイノシシがワクチン餌によって高い抗体価を持てば、生まれてくる子にも抗体が移行するため、より多くのイノシシで抗体を獲得できる。2期目は7~9月。夏場は平時でも生まれて間もない子イノシシが死ぬため、生き残ったイノシシに与えて抗体の保有率を高める。3期目は来年1、2月で、餌を求め移動する時期を狙う。

 作業はまず餌付けから始め、ワクチンに似た固形物などを事前に与えておく。ワクチン餌は

冷凍保管が必要で、野外に設置すると効果が落ちていくため、設置後5日ほどで回収する。

 その後、イノシシに抗体があるかを調べる。現場にとって多大な労力となるだけに、官民一体となった支援が欠かせない。

 農場内にウイルスを侵入させない衛生管理も求められる。

 年間2万人が来校する北海道の帯広畜産大学では、ウイルス侵入から家畜を守るため、さまざまな工夫を凝らしている。「サニタリー(衛生的な)エントランス」や、汚れを落としやすい長靴を開発・導入した。サニタリーエントランスとは、農場内と外の靴を履き替えるスペースのこと。すのこなどで区切って、農場に行くときは靴を脱いで衛生的な長靴に履き替えて移動する仕組み。

 長靴はメーカーと共同で開発した。靴底の溝に汚れが詰まりにくくしたのが特徴で、水を流しながらブラシで数十秒こすり、消毒すればウイルスがほとんど残らないという。同大の木田克弥教授は「どんなに防疫対策を呼び掛けても、慣れてしまうとむらが出やすくなる。作業の中で自然に衛生管理が徹底できるよう、仕組みを見直すことが大切」と指摘する。

 ワクチン餌の使用が始まっても油断は禁物だ。豚コレラに加え、あらゆる疾病の侵入を防ぐため、基本的な衛生対策を引き続き励行する必要がある。
 

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