鉄道の旅の楽しさは、駅弁と一対だろう

 鉄道の旅の楽しさは、駅弁と一対だろう。今は駅で買って乗り込む人が多数派で、車内販売は過去のものになろうとしている▼その昔は、わずかな停車時間に目当ての駅弁を売り子さんから買ったり、車内販売で目移りしながら選んだりした。車窓を流れる景色を眺めて箸をたぐれば、旅情はいや増す。経木の裏についた米粒までいとおしい。おかずを酒の当てにする赤ら顔のおじさんも多かった▼駅弁を旅の友としたエッセイストの秋山ちえ子さんは「汽車の旅の食事の楽しさは日本が世界一」と言った。そうだろう。アジアや欧米の駅弁も食べたが、味、種類、風情とも日本の比でない。その秋山さんも後年は、量が多く味も濃いので「以前のように駅弁を楽しめなくなった」と嘆いた▼各地の名物駅弁がそろう駅構内の売店の充実、販売員の高齢化や人手不足、売り上げ不振も重なり、JRなど鉄道各社が相次いで車内販売に見切りをつけている。かつてJR東日本の関連会社が、米国産の米と肉を使った冷凍駅弁の輸入を始め、農業団体から抗議の声が湧き起こったのも、今昔の感がある▼あすからは、北海道新幹線の車内販売が終了する。今から10連休が思いやられる。米消費にも影響が出ないか。昭和、平成の鉄旅を彩った風物が消えていく。

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