食料安保の危機 新たな国民運動展開を

 食料安全保障が危機的な状況だ。相次ぐ貿易自由化、地域の衰退で生産基盤は弱まり、担い手の確保は喫緊の課題である。食料自給力を維持し、低迷する自給率を引き上げねばならない。持続可能な未来のために、食料安保への理解と基本政策確立を目指し、新たな国民運動を展開していく時だ。

 食料安保の基本政策確立に向けた国民運動は、食料主権を取り戻す道でもある。JAグループの組織運動、事業展開と連動するはずだ。地方創生や国連のSDGs(持続可能な開発目標)実現にもつながる。

 日本は今、経験したことのない農業総自由化の危機を迎えている。安倍政権は「強い農業」づくりの一方で、国産農畜産物の輸出拡大を前面に出す。だが、自給率38%と先進国最低水準の中では、まずは自給力を高め国内農業生産を拡大し、自給率を引き上げていくことを最優先で取り組む必要がある。

 大規模農業はもちろんだが、家族農業を含めた多様な担い手による“全員野球”で農業の生産基盤を維持・発展させる基本政策を確立すべきだ。

 強い農業づくりの要素として、優良農地、農業者、営農技術などが欠かせない。これらが強い農業の“体力”を形成し、それが担保されなければ、強い農業は机上の空論にすぎない。

 今年は、農政上の大きな節目を迎えている。一つは、食料・農業・農村基本計画の5年に1度の見直し。政策の検証を経て、今後5年間の農政指針を議論する。ただ、基本計画に「食料安保」を明記しただけでは何の意味もない。それを着実に実行し、最終的に自給率の向上につなげる年次的な道筋と、具体的な数値目標が必要だ。

 いま一つはJAを巡る状況だ。5月末には政府の農協改革集中期間が期限を迎え、さらに中央会制度の抜本見直しがある。農業と地域が危機的な状況にある中、JA全中は「持続可能な食と地域づくり」を提起。食料安保の確立に向け、国民運動として盛り上げる方針を示した。食料安保を柱とした基本政策確立が、組織の新たな結集軸になると見通す。

 創造的自己改革と連動させることも欠かせない。改革の3本柱である「農業者所得向上」「農業生産拡大」「地域活性化」は、食料安保確立と表裏一体だ。今年は12年に1度、統一地方選と参院選が重なる。各候補者に対して、食料安保の確立を求める農政運動を展開しよう。

 鍵は、国民が食料安保への共通認識を持つことだ。全中は「食の安全・安心の確立」「国内生産の拡大」「災害時も含めた食料安定供給」と定義した。国産農畜産物の安定供給の重要性を、国民にどう理解してもらうかが課題となる。

 災害が多発し、経済格差が広がる中で共に助け合い、分かち合う協同組合としての役割発揮が問われている。 
 

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