JA直売所→子ども食堂 新鮮野菜たんと食べて 農家の善意 運営支える

時本さん(右)に規格外となった野菜を手渡す小寺さん(東京都清瀬市で)

 住民や自治体などが主体となって地域の子どもに低額や無料で食事を提供する「子ども食堂」に、JAが農作物を提供する動きが広がってきた。JAの協力は、経営が厳しい子ども食堂にとって大きな支えとなる。JAにとっては、これまで接点の少なかった市民団体と関わることで、地域との新たな絆が生まれる機会になっている。
 

規格外を無償提供


 東京都清瀬市。JA東京みらい清瀬支店の直売所「みらい清瀬新鮮館」に、農家の小寺和幸さん(52)が規格外で直売所に出荷できなかった野菜を持ち込む。「今までは近所の人にあげて、それでも余ったら捨てていた。そういう野菜でも喜んでもらえるなら、ありがたい」と笑顔を見せる。

 直売所がリニューアルした2017年、同市の生活支援コーディネーターで、子ども食堂運営に携わる社会福祉士の森尚哉さんから食材提供の依頼があった。売り上げにはならないが、規格外品の廃棄費用はかからなくなり、廃棄する野菜の置き場所もいらなくなる。話し合いを重ね、直売会に加盟する農家48人全員が賛同。18年に食材の提供が実現した。

 農家は規格外品を直売所に持ち込み、無償で提供する。JAが森さんに連絡し、森さんは子ども食堂などを運営する5団体へ食材を振り分ける仕組みだ。

 森さんは「肉や乾物は安いときに買って冷凍したり保存したりできる。鮮度の良い、旬の野菜を予算内で手に入れるのが大変だった」と振り返る。JAの食材提供が運営の大きな支えになったという。さらに食材を分配するに当たって、食堂を運営する5団体が「互いにレシピや仕入れ状況などを情報共有するようになった」という。

 子ども食堂ではJAの祭りのちらしを配るなどJAの地域活動を紹介。食堂利用者にも地場産の野菜をアピールする。子どもたちからの感謝の言葉をつづった色紙を届けるなど「子ども食堂と関わってよかったと思ってほしい」と、双方にメリットのある関係を築く。

 JA指導経済課の時本隆史営農指導士は「これまで接点のなかった地域と新しいつながりができた」と話す。
 

食材の引換券配布


 鳥取県のJA鳥取中央は、昨年から管内7、8カ所の子ども食堂に、社協を通じて食材やJA直売所で使える農畜産物の引換券を提供している。金額に応じて直売所で食材を選べる。開催日がそれぞれ異なる子ども食堂に対して「その時の旬のものを渡したい」と、JAは説明する。

 地元の農業を知ってもらおうと、特産品を提供。何を提供するか、年度の計画書をあらかじめ通知することで「事前に献立を決められる」と好評だという。
 

地域と関係構築を 連携きっかけに


 農水省が17年に実施した、「子ども食堂に関する地域との連携状況による調査」では、農協・漁協などと連携していると答えた子ども食堂は、回答数274件のうち、全体の13・1%にとどまった。ただ、こうした子ども食堂に関わろうとするJAが増えつつある。

 JAの子育て支援について研究するJA共済総合研究所の福田いずみ主任研究員は、JAに求められることとして、農産物などの提供の他に、地域との関係性の構築を挙げる。「食材調達は食堂を運営する上で大きな課題。しかし、生産者やJAとどうしたら関われるのか分からないという声は多い。子ども食堂の仕組みにJAが協力する形で、地域との関係性を築くことが大切だ」と指摘する。 
 

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