スマート農業普及 安全最優先の法整備を

 ドローン(小型無人飛行機)や自動走行トラクター、除草ロボットなど労力不足を補うスマート農業が花盛りだ。こうした先端技術は高齢化が進む現場にとって頼もしい道具の一つとなる。ただ、「機械は壊れる」「人はミスをする」ことを前提とした安全第一の法律、制度設計が欠かせない。

 国土交通省は、ドローンの安全対策を強化するため航空法改正に踏み切る。改正案は8日に閣議決定され、国会で審議された後、今秋の施行を目指す。柱は罰則の強化だ。飲酒後の操縦を禁止し、飛行前の機体点検を義務付ける。事故が起きた場合は、同省が操縦者の自宅やメーカーなどを立ち入り検査し、事情聴取できる制度も新設する。

 酒や薬を飲んだ後に、道路や公園など公共の場所で危険な飛行をした場合は1年以下の懲役または30万円以下の罰金となる。農薬の空中散布など農業分野でドローンの活用が広がる中、墜落や操縦ミスを防止するのが狙いだ。

 事故原因も徹底究明する。これまでは事故が起きても、同省が直接調査できる規定がなく、任意の情報提供に頼るしかなかったが、改善した。

 背景には、ドローンを含む無人航空機の事故が相次いでいる問題がある。同省によると2016年度は55件、17年度は63件、18年度(1月末現在)は61件に上る。昨年5月には福井県で農薬を散布するためドローンを操作中、離陸時に突風にあおられて機体が横転して操縦者に接触、右足の膝を裂傷する事故が起きた。これまで農薬散布中の航空機事故というと無人ヘリコプターが主流だったが、ドローンの活用が広がっていることで、こうした事例が今後も増えることが想定される。

 気になるのは、山などが電波を遮り通信環境が悪化して機体が突然、制御できなくなり民家の屋根などに墜落する事故が多発していることだ。事故全体の4割を占めている。

 政府は今後、農薬散布用ドローンの利用拡大に向け、自動運転機能を備えた最新型の普及を進める考えだが、効率より安全を最優先すべきだ。

 一方、無人で自動走行するトラクターなど大型ロボット農機の安全対策は万全だろうか。農作業中の死亡事故の過半を占めるのは大型農機の転倒、転落だ。万一、無人トラクターが事故を起こした場合、誰が責任を負うのだろうか。

 農水省は、農業機械の自動走行に関する安全性確保ガイドラインを作り、メーカーや導入主体、使用者の順守事項を定めた。「死亡事故などの重大事故を生じさせない、その他の事故頻度も可能な限り低減することを目標とする」としているが、ガイドラインに法的根拠はなく強制力はない。ドローンのように航空法に基づく事故防止策と比べれば、実に心もとない。

 新技術導入は、法整備を含め万全な安全対策が不可欠だ。

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