鳥獣害対策 国民全体で危機共有を

 地域の努力や工夫で一定の成果を上げている鳥獣害対策だが、狩猟の担い手減などで足元はぐらついている。24日から始まる豚コレラ封じ込めに向けた野生イノシシへのワクチン餌の使用も地元には大きな負担となる。鳥獣害は農山村だけの問題ではない。都市も含めて危機感を共有すべきだ。

 農水省によると、野生鳥獣による農作物被害額は、2010年度の239億円をピークに減少が続いている。17年度は164億円と、前年度に比べて5%減となった。害獣の侵入を防ぐ防護柵の設置や捕獲などの対策が奏功した。

 数値の上では明るい兆しが見えるが、実態は厳しい。とりわけ将来への不安が大きいことが分かった。先月末に行われた全国鳥獣被害対策サミットの事前アンケートでは、「捕獲従事者の高齢化が進んでいる。新規の担い手の掘り起こしや人材育成が課題だ」「地域全体で対策を行うための意思の統一やモチベーションの維持が難しい」「税金を使わずに持続的な捕獲体制をつくることが困難」といった意見が相次いだ。

 以前から指摘されてきた課題だが、いまだに解決されていない。もっと地域の枠を超えた知恵の結集が必要ではないか。例えば、捕獲従事者の人材不足を解消するには、狩猟に興味のある都市住民を農村に呼び込んだり、NPO法人などで活躍する人材を全国から募って登用したりといった“外の力”を借りる方法も考えられる。

 対策を考える上で欠かせない視点は、鳥獣は農作物を食い荒らすだけでなく、家畜伝染病などをばらまく“運び屋”にもなるということである。

 岐阜県や愛知県などで発生した豚コレラも、野生のイノシシが感染を拡大させたとみられる。狩猟で野生イノシシを刺激し感染が広がる恐れがあるため、有害捕獲はできなくなる可能性がある。調査で捕獲したイノシシは全て処分し、食用には回さないという。

 両県は、ジビエ(野生の鳥獣肉)振興を進めてきた地域だけに、狩猟者やジビエを扱う店からはワクチン餌の使用に不安の声も上がっている。ジビエは害獣の有効活用や狩猟者の意欲向上、狩猟費用の確保につながっており、鳥獣害対策の後退や風評被害も懸念される。野生鳥獣は市町村や都道府県の境を越えて移動するため、対策は待ったなしだ。

 全国鳥獣被害対策サミットでは、ジビエの利活用に取り組む産地・個人が成果を報告した。行政や大学、都市住民を巻き込んで狩猟を補完している事例や、情報通信技術(ICT)や衛星利用測位システム(GPS)を利用し、耕作放棄地対策とセットで捕獲している事例などを紹介。こうした取り組みを各地で共有し、実践したい。

 鳥獣害の問題を農山村だけにとどめず、国民全体の問題として共有し、知恵を結集したい。

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