エレベーターに乗ると必ず押すのが「閉」ボタン

 エレベーターに乗ると必ず押すのが「閉」ボタン。押さなくても閉まるのに。その数秒が待てない▼信号も青になるまで待てない。渡ろうとしたら初老の男性に止められた。「ここは事故があったんだ。30秒ほどだよ。待った方がいい」。ハッとした。電車に乗ったら「混雑の影響で3分遅れとなっております。誠に申し訳ございません」。3分くらいで謝らなくてもいいのにと思ったが、隣の男性はチッと舌打ち。待てない人が増えている。時代は速さを追い求める。8年後にはリニアモーターカーの中央新幹線が開業し、品川名古屋間を40分で結ぶという。「狭い日本そんなに急いでどこへ行く」。そんな標語が懐かしい▼かつての上司は待つ人だった。「イライラしたら親指をかんでつばが乾くまで待ってごらん。怒りがどこかにいってしまうから」と教わった。乾くまでじっと待ってみた。気持ちが整理されていく気がした▼種をまき収穫まで待つ。家畜が育つまで待つ。待てない社会の中で農業は待つのが仕事である。作家の阿川佐和子さんは「速効性ばかりを重視することが、はたして人間の幸せに繋(つな)がるのだろうか」「『待つ』ところに文化が生まれるのではないか」(「町村週報」から)と問う▼速さと引き換えに、大切な何かが失われていく。 

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