牛の蹄病対策 関連業種の連携が鍵に

 乳房炎、繁殖障害と並ぶ牛の三大疾病の一つ「蹄病(ていびょう)」が世界的な問題となっている。生産性が落ちるだけでなく動物福祉の面からも好ましくない。獣医師だけで蹄病を減らすのは、不可能と言っていい。削蹄師ら関連する職種との連携を進め、それぞれの情報をまとめる取り組みが必要だ。

 炎症や痛みを伴う蹄病は、早期発見と適切な治療が大事だ。そのためには個々の牛の蹄や健康状態に関する情報を関係者が共有する必要がある。牛にはさまざまな人が接触するだけに、それぞれ独自の情報を持っているが、情報を共有する機会は少ない。

 健康状態を把握する獣医師も、蹄の状態にまでは目が行き届かない。全国的に産業動物を診られる獣医師が不足していることもあり、予防より治療で牧場に出向く機会が多いためだ。

 蹄の状態を把握できる立場にいるのは削蹄師だが、獣医師ではないため不具合を認めても治療はできない。患部を保護する程度の対応は可能だが、高度な処置は獣医師法に抵触する恐れがある。実際、獣医師からクレームを受けた削蹄師もいる。

 牛の健康状態や肉の付き具合で飼料を設計するコンサルタントも独自の情報を持っており、そうした情報を共有できれば、蹄病対策に成果を上げられる。

 東京都内で11日から開かれた国際学会では、獣医師と削蹄師、飼料栄養技術者が会合の場を設けて蹄病を減らしている米国の大学の取り組みが報告された。削蹄師と獣医師との間にある壁は、洋の東西を問わないようだ。「削蹄師が重要な情報を持っていることを、獣医師に知ってもらうべきだ」と発表者は強調した。

 似たような話は、牛の繁殖障害対策でも出ている。繁殖障害の治療は獣医師がするが、個々の牛に関する繁殖情報は、人工授精師の方が把握しやすい。獣医師と人工授精師との協調体制が強固にできれば、繁殖成績が上がる可能性がある。

 獣医師は地域、業種で偏在し、特に産業動物を相手にする獣医師は不足気味だ。昨年、52年ぶりに大学の獣医学部が新設された。許認可を巡る国会での論点は、首相の口利きと国家公務員の忖度(そんたく)で、長期的な獣医療の体制を考えるような機会になったかは疑問だ。

 人口が減少している日本の中でも、農村は先行して労働人口が減っている。不足しがちな産業動物の獣医師を増やすのは、簡単なことではない。獣医師の増員も大切だが、削蹄師や人工授精師などの他業種が協調することで仕事を効率的に回す手だてを考えるべきだ。

 政治が頼りにならないなら、米国のように大学がまとめ役になってもいい。関係業界が率先して交流の場を設けてもいい。

 まずは蹄病対策から。従来の枠組みにとらわれず、協調し、それぞれが持つ情報を交換する仕組みを作ってはどうか。

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