農村ビジネス 担い手続々と 兵庫・篠山イノベーターズスクール 開校2年半 

ゼミで勉強する受講者(篠山イノベーターズスクール提供)

吉良さん(左)からサラダ用の野菜を教えてもらう東さん(中)と谷川さん。広がるネットワークも魅力だ(兵庫県篠山市で)

カフェや農福連携・・・ 起業17人、農家経営拡大も 行政と大学連携


 兵庫県篠山市と神戸大学が開校した「篠山イノベーターズスクール」で、続々と“農村ならではの仕事”が生まれている。市民や農家、学びに来た都市住民との交流拠点で、全国でも珍しい農村版ビジネススクールだ。カフェ経営や農福連携といった地域の課題解決や農山村の資源活用で、農家の事業拡大にも成果を上げる。大学と行政がタッグを組んだ、新たな地域づくりが進む。

 スクールは、同市と同大学が2016年にJR篠山口駅の“駅ナカ”につくった研究室「農村イノベーションラボ」で行う。ラボは調査研究やワークショップ、イベントなどに活用。中でも同スクールは全国でも珍しい農村での起業、継業に特化する学びの場だ。

 受講生は地域ブランドの立ち上げ、農業教育事業、映像制作、商品開発など新たな収入確保やなりわいづくりに成果を上げる。神戸大学の中塚雅也准教授は「農村の資源を生かし、自分のためにも農村のためにもなる、新たなビジネスモデルを生み出すプログラムになっている」と指摘する。

 16年10月から88人が受講し、17人が起業。5人が事業拡大した。受講生は丹波・篠山地域の住民が3割で、大阪や神戸からも学びに来る。30、40代が半数。平日の夜や土・日曜日に授業があるので、起業希望者だけでなく、仕事に生かす目的で農家ら経営者の他、会社員や主婦らも受講する。講師陣は大学教授や多方面の農山村の企業経営者、コピーライターなど充実している。授業は5月~翌年2月の期間で、受講料は8万円。開業までのサポート、事業拡大や相談にも応じる。

 同市の酒井隆明市長は「住民も若者もみんなで学ぶ過程は地域活性化そのもの。黒豆などたくさんの特産品を観光やカフェ、加工など新たな道に生かすヒントを市も探りたい」と意欲的だ。

 現在、受講生を募集中。同スクールのコーディネーター、谷川智穂さん(28)は「今後は資金面のサポートが充実できるよう金融機関などと密な連携を進めたい」と見据える。起業希望者だけでなく、公務員やJA職員も受講が可能だ。
 

学習生かす場 実現 脱サラで帰郷 吉良佳晃さん


 大阪市内から90分で行き来ができる中山間地域の篠山市。「甘くて香りも良いでしょ。サラダにぴったり」。京都府からUターンし、葉物野菜などを有機栽培する吉良佳晃さん(38)が笑顔で畑を案内する。

 2年前に同スクールで学んだ吉良さん。現在は、新規就農希望者や食に関心のある人と語り合う「農業BAR」を月に1度開き、農業の未来や地域の課題などを議論する。吉良さんは「マーケティングの重要性が分かり、農業をビジネスの視点で考え、たくさんの貴重なつながりができた」と実感する。京都大学を卒業し企業に勤めていた吉良さんは今、「設計されていない人生を歩んでいる」と、古里での就農に納得しているという。

 6月から同市内でカレー店を経営する予定の東千世子さん(57)も、スクールで学んだ一人。吉良さんから農家を紹介してもらい、地元産の野菜をふんだんに使ったカレーを作りたいと考えている。昨年、住んでいる京都府向日市からスクールに通った。

 売れる加工品開発、強みを生かす農業経営、デザインなどをテーマにしたゼミに参加する中で、前向きな思考になったという。「考え方を整理する癖がついた。都会の中では自分の力を生かしたくても限界があるが、農村なら自分の役割を発揮できる余地がある」と東さん。紹介してもらった同市の空き店舗で起業する予定だ。 
 

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