偉大であるほど引き際は難しいといわれるのに

 偉大であるほど引き際は難しいといわれるのに、最後まで“らしさ”があった▼引退を決めた米大リーグ・マリナーズのイチロー外野手である。45歳。「最低でも50歳までは現役を続ける」と言っていたのに、日本での凱旋(がいせん)試合が最後の舞台となった。「後悔などあろうはずがない」。会見での言葉は覚悟を決めていたものであろう。「侍」である▼数々の記録を打ち立てた。自身も被災した阪神・淡路大震災の年には、首位打者、打点王、盗塁王、最多安打、最高出塁率の「打者5冠王」を取って、神戸を励ました。米大リーグに移っては、84年間破られなかったシーズン最多安打を更新した。「記録はいつか誰かが抜いていく」と謙遜するが、残した数字は超ド級である▼個性的な言動から「変人の天才」とも。国民栄誉賞には、「ピークが終わったのではないかと受け止められると、ファンの方々にも申し訳ない」と2度も固辞した。ホーム球場で食べた愛妻のおにぎりは2800個。常に自分のスタイルを貫き、米国では通用しないといわれた日本野球の評価まで変えた。二刀流大谷翔平投手との「侍」対決が実現しなかったことが、心残りではある▼不世出の「安打製造機」は、平成の時代と共に第一線から退く。とてつもない足跡を残して。
 

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