大地康雄さん(俳優) 映画で学んだ農業実践 お客に自家菜園の旬提供

大地康雄さん

 は熊本に生まれて小学校5年生までいたんです。おやじは風来坊で沖縄に行っていて、おふくろが行商で支えてくれてたんですけど、貧乏だったもんですから。

 どうしても食べたいものがあると、人さまのものを……。当時はゲーム感覚で、畑からスイカとかトマトとかを頂いていたんです。今考えると、本当に申し訳ないことですけど。

 畑にはないごちそうといえば、バナナです。金持ちの息子がいましてね。彼が風邪をひくと、枕元に必ずバナナが置かれてたんですよ。私は見舞いに行くんです。「どぎゃんね。この熱じゃ、もう食欲なかんもんねえ。じゃあこのバナナ、代わりに俺が食っとくけん」と。彼が風邪をひくのが楽しみだったです。

 かなりの悪がきで、周囲の大人は「このままでは本当に犯罪集団に入ってしまう」と心配していたほどです。

 ところが、風来坊のおやじがやっと沖縄の石垣島に落ち着いたので引っ越したんです。それで変わることができました。

 子どもたち10人くらいで、農家からくず芋をただでもらって、海岸に行くんです。砂の中に芋を埋めてから、もりを持って海にもぐり、魚を突いたり、シャコ貝を捕ったり。2時間くらいたって浜に上がり、生で食べたり塩焼きにして食べたりしました。味つけは塩水で。砂浜の中では「焼き芋」が出来上がっているから、それと一緒に。

 海の幸を堪能した後は、デザート。山に入って、鈴なりのグアバをもいで食べました。自然のありがたさを知って、まともな人間になれました。

 私は、フィリピンでトマト作りに挑戦する「恋するトマト」という農業をテーマにした映画を企画して主人公を演じたことを機に、十数年前から自宅の庭と区から借りた菜園で、野菜を作っています。

 画で学んだように、まずは土づくりなんです。てっとり早く、もみ殻とぬかと水を混ぜて、種をまく1カ月前から発酵させて使っています。生ごみも全部再生させています。

 3年前に苗を買いに行ったら、隅っこの方に、今にも倒れて死にそうな小さな苗があったんです。オカワカメ(アカザカズラ)。ツルムラサキの仲間ですね。誰も買いそうにないので、私が買いました。庭に植えたら見る見る元気になって。今や高さ3メートル、幅6メートルくらいになりました。家では食べきれず、ご近所にお分けしても追いつかないくらいです。

 他にも常に十種類くらいの野菜を作っていて、お客さんが来ると、旬の野菜を味わっていただきます。新鮮で純粋な自然からの贈り物。25年くらい使い続けているプロ用中華鍋で炒めてお出しします。

 と同じように大切なのが、水ですね。これを教わったのも、映画。「じんじん~其(そ)の二」という作品で、神奈川県の秦野で撮影をしました。

 ここは丹沢水系の地下水があっちこっちから湧き出てくる名水の里。ロケ地としてお借りした私が演じた主人公が住む家の大家さんの土地でも、湧水が出っ放し。それが田んぼに直接入っていくから、お米のおいしいこと。私、東京と秦野を往復するたびに、ポリタンクを5個持参して水を持ち帰りました。

 前作の「じんじん」は、北海道を舞台に、主人公と農業研修に来た女子高生の関わりを描きました。私が出た作品を見て、農業に進んだという若い人の話を聞き、うれしく思っています。

 農業は素晴らしいですよね。人間は自然という大きな力に生かされていると実感でき、謙虚な気持ちになれますから。(聞き手 菊地武顕)
 

 だいち・やすお


 1951年、熊本県生まれ。79年に「衝動殺人 息子よ」でデビュー。企画も務めた「じんじん」(2013年)で、イマジンインディア国際映画祭マドリッド最優秀俳優賞受賞。「じんじん~其の二」は現在、地域上映を続けており、上映希望者を募集中。 
 

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