EUワイン関税ゼロ 「影響未知数」 競合が激化? 裾野広がる? 主産地長野

シニアソムリエの資格を持つ北村秀雄さんが経営するセラーキタムラは、国内外の幅広いワインを扱う(長野市で)

低価格帯ほど危機感 酒類全般消費減需要奪い合いも


 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が2月に発効して2カ月。EUから輸入するワインの関税(15%または1リットル当たり125円の安い方)は、即時撤廃された。国内有数のワイン産地の長野県では、「ファン拡大のきっかけになる」との期待と、競合激化への懸念が入り交じる。「すみ分けできる」という見方の一方、「影響を長期的に注視するべきだ」と指摘する生産者や産地関係者の声は根強い。(飯島有三、江口和裕)
 

安い輸入品 “入り口”に


 「これを機に幅広い人がワインに親しんでくれれば、やがてわれわれの商品を手に取ってくれる機会も増えるだろう」

 県産ワインを振興する「信州ワインバレー構想推進協議会」の玉村豊男会長は言い切る。

 玉村会長は東御市で自らワイナリーを運営。ブドウを栽培し、年間3万本(1本750ミリリットル)ほどを生産する。価格は平均すると1本3000~4000円台。「日本ワインは付加価値が特徴で、100円安くなったからあっちを買おう、とはならない」とし、動揺はない。

 さらに「最初から日本ワインでなくてもいい。(輸入ワインでも)飲み進めるうちに身近なワイナリーを訪ねてみよう、となれば良い」と、愛好者の裾野の広がりにも期待する。

 県産ワインを取り扱う長野市内の小売店も、冷静に受け止める向きが多い。「格安の海外産とは土俵が違うから、県内産の売れ行きに目に見える変化はない」(セラーキタムラ)、「少しの値段の変化より、お酒自体が飲まれなくなってきたことの方が気掛かり」(丸本洋酒店)
 

大手の酒蔵 懸念拭えず


 一方、高価格帯から比較的低価格まで幅広く扱う作り手は、安価なEU産に懸念を抱く。

 1000~1万3000円の価格帯で、30種以上を展開する塩尻市の林農園の林幹雄社長は「輸入ワインは脅威。独自性の強い小規模ワイナリーはすみ分けできるが、一定規模以上になると様子は変わってくる」と話す。

 EU産だけでなく、チリ産は4月、オーストラリア産は21年までに関税が撤廃される。県ワイン協会理事長を務める同農園の菊池敬専務も「無税になったワインが出そろったときどうなるか。影響はボディーブローのようにじわじわと出てくるだろう」と予想する。
 

検証踏まえ 国内対策を


 酒類全般への影響を指摘する声も上がる。県内のあるJA関係者は「酒の消費量が減っている中で、安い輸入ワインで需要が満たされてしまえば、日本ワインだけでなく、日本酒などの消費にも影響が出てくるのではないか」と強調する。

 国税庁の過去30年ほどの統計によると、成人1人当たりの酒類消費量は、1992年度の101・8リットルをピークに減少傾向が続く。2016年度では80・9リットルとピーク時の8割にとどまる。限られたパイの奪い合いになりかねない状況だ。

 JA長野県グループは「ワインに限らず、影響は未知数。日欧EPAと環太平洋連携協定(TPP)の発効でどのような影響があるのか、政府による検証が必要だ」(長野中央会)との立場。2月には、同グループとして特別決議も行い、両協定による影響の精査と万全な国内対策の確立を訴えている。

 日本とEUのEPAが発効した2月、EUから輸入されたスパークリング(発泡)ワインの量が前年同月に比べ約1・6倍に急増したことが28日、分かった。日欧EPAで、EU産ワインの関税が撤廃されたことが理由とみられる。

 財務省が同日、2月の品目別の貿易統計速報を発表した。EUから輸入された発泡ワインは362万リットル(前年同月比1・6倍)で金額は64億3600万円(1・3倍)だった。発泡タイプ以外のボトル詰めワインの数量も1・4倍に伸びた。

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