農業の温暖化対策 土づくり推進こそ近道

 地球温暖化をどう食い止めるか。農水省は脱炭素社会に向けた基本的考え方をまとめる作業を進めている。太陽光など再生可能エネルギーのフル活用など野心的な目標を掲げるが、堆肥や緑肥の投入による土づくりの推進こそ近道ではないか。

 温暖化につながる二酸化炭素(CO2)の排出量は増え続けている。国際エネルギー機関が発表した2018年の世界CO2排出量は前年比1・7%増の約330億トン。国内の観測地点でのCO2濃度も過去最高を更新、対策は待ったなしだ。

 16年度の国内の温室効果ガスの総排出量はCO2換算で13億700万トン。農林水産業からの排出は5060万トンで全体の4%を占める。同省は「挑戦的なビジョンを掲げ、革新的な削減技術の開発、導入を強力に推進する」として来月17日に農林水産分野の考え方をまとめる。

 検討は、20年以降の温室効果ガスの排出を削減する国際的な枠組み「パリ協定」に基づく。協定は、全ての国に長期の低排出開発戦略の策定を求めており、日本は50年までに温室効果ガスを8割削減する目標を掲げた。ドイツやカナダ、英国なども8割程度の削減を目指す野心的な目標を定めている。

 農水省の対策は、①再生可能エネルギーのフル活用②温室効果ガス削減量の“見える化”③炭素隔離・貯留の推進とバイオマス(生物由来資源)のフル活用④海外の排出削減の貢献──などが柱。中でも有望視されているのが太陽光発電と農産物の生産が同時にできる営農型発電だ。「農家所得が向上し、地方創生につながる。他産業に供給すれば、国全体の温室効果ガス削減に貢献できる」と勧める専門家もいる。

 ただ、考慮しなければならないのは太陽光パネルの寿命だ。寿命は約25~30年。固定価格買い取り制度が始まった12年以降、設置は加速度的に増えた。その結果、ピークの35~37年には、年間約28万トンのパネルのごみが出ると試算されている。種類によっては鉛やカドミウムなどの有害物質が含まれ、農地に不法投棄されれば、米などに悪影響を及ぼす恐れがある。

 結局、原点の土づくりを見直すことが大事ではないか。農研機構・農業環境変動研究センターの白戸康人統括監は、堆肥や緑肥の投入を増やすことで肥沃(ひよく)度が高まり生産性が上がり、気候変動も緩和できると指摘する。堆肥を投入した圃場(ほじょう)は、投入しない圃場と比べて冷害年の水稲収量が最高4割増えたという研究結果もある。「堆肥の投入は労力がかかるが緑肥なら楽。基本的な土づくりを地道に続けることが大事」と強調、「世界の土壌中の炭素を毎年0・4%増加させることができれば、大気中のCO2濃度の上昇は止められる」との試算を紹介する。

 官民挙げて土づくりを奨励する。持続可能な手法こそ農家と地球に優しい取り組みである。

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