トマト選果“カイゼン” 作業員の配置見直し 無駄排し負担平等に 熊本・JAやつしろ

箱詰め部の床にはテープで「1」「2」「3」と作業範囲を区切り、従業員の無駄な移動を制限した(熊本県八代市で)

人員80→60人 処理能力10%向上


 熊本県のJAやつしろが、トヨタ自動車のカイゼン方式を取り入れたトマト選果場の働き方改革を実現させた。従業員に無駄な動きがないか徹底的に検証。従業員が作業する範囲を厳格に定め、余計な歩数を減らしたり、15分単位で持ち場を交換したりといった新ルールを決めた結果、最大で1日80人必要だった人手を60人に減らせた。農家が選果を手伝う機会も減り、生産に専念できる環境づくりにもつながった。(木原涼子)

 八代市のJA中央トマト選果場。レーンは八つあり、1日8・5時間で53万玉の処理が可能だ。10~6月に稼働する。「ピー」という笛の音に合わせ、従業員は隣のゾーンに移動する。ローテーションは1回15分。箱詰めの途中でも持ち場を離れ、次のゾーンに移動する。従来なかった光景だ。

 今回の改善は、トマトを選果機に載せる作業と箱詰めが対象。選果機に載せる作業では、最後列の職員がトマトを置く場所がなく、手余り状態が頻発。一方、箱詰めでは自由に動き回る従業員が、排出口に集まったトマトを取り合うなど無駄な移動が多く、箱詰め時間のロスと従業員の疲労増につながっていた。

 新体制は、並列する2レーン間の箱詰めスペースを三つのスペースに区切る。その範囲から一切出ずに箱詰めすることで余計な歩行数を減らした。トマトが集中する場所には、自由に移動できる特権を持った「フリーマン」を2人を配置した。役割を固定すると従業員が不公平を感じるため、ローテーション制を導入。忙しさを平等にした。

 見直しの結果、選果機に載せる作業で1人当たりの処理玉数は30%弱増え、箱詰め玉数も1人当たり50~275玉増えた。従来の1レーン10人から、2レーン17人体制にすることで、1日当たり3万玉多く処理できる想定になる。JAは「10%選果能力が向上する」とみる。

 これまで選果場の運営はJA担当者や生産者の経験頼りだった。第三者の目で課題を分析するため、トヨタ自動車と連携。担当者を同社から招き、世界的に有名な「カイゼン」の視点で現場の「ムリ・ムダ・ムラ」を洗い出した。取り組みには県の「2018年度熊本地震復興労働力確保対策事業」を活用した。

 長年染み付いたやり方を変えることに、現場からの反発もあった。そのため、選果場専任のJA若手職員が率先してローテーションに入り、不具合を指摘する声などをパート従業員から地道に吸い上げ、細かい修正を何度も重ねた。新体制の運用から5カ月。JA担当者の福田凌吾さんは「ルール作りによって作業が平等になり従業員の意識が変わった」と強調する。

 トマト生産量全国トップの八代市。JA管内に四つの選果場があり、年間の総生産量は約3万3000トン。生産者数は減る一方、10アール収量が上がり、選果場の荷受量は年々増加傾向にある。出荷ピークが12月と4月の2回あり、荷受けが増える時期は従業員の時間外勤務の他、生産者、JA職員の応援で対応してきた。改善によって、今季の年末は生産者の応援も解消できた。

 同県では16年の熊本地震以降、建設業などに人手が流れ、季節雇用が多い選果場では人員の確保に苦慮している。県は「JAやつしろを参考に各地の選果場で人員配置の見直しなど工夫に乗り出してほしい」と指摘。JA園芸課の杉谷武徳課長代理は「長年の勘や経験値に頼り過ぎず、作業を数値化し、ルールを作ることで同じ人数でも回せる」と説明する。
 

<ことば> カイゼン方式


 徹底的に無駄を省くトヨタ自動車の生産方式の核をなす考え方。作業時間の短縮や工具の改良など、全員参加で取り組む。農業分野でも応用し、経営の効率化や収益性アップを目指す動きが出ている。 
 

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