キンカン「剪定班」 若手が出動 高齢農家お助け 宮崎・JAはまゆうハウス専門部

剪定班のメンバー。「基本に忠実」「迷ったら切る」が座右の銘だ(宮崎県日南市で)

 平均年齢35歳。宮崎県のJAはまゆうハウスきんかん専門部の若手で構成する「剪定(せんてい)班」が、キンカン園地の荒廃を防ぎ、産地を盛り上げている。高齢だと1人では管理が難しい剪定作業を時給制で手伝う。班が手を入れた木は太陽光が当たりやすい樹形となり、収量がアップ。部の出荷増につながった。経験が浅い若手が技術を高める場にもなっている他、部員の一体感を生み出している。(木原涼子)
 

技術磨く場 質・量アップ 産地に一体感


 「ここ切っていいっすか」「いや、残す」。そんなやりとりが園地のあちこちで聞こえる。4月上旬、この日の剪定は日南市の久嶋悟さん(77)の園地だ。ハウスに2メートル間隔で茂るキンカンの枝葉をはさみやのこぎりで切り落とす。一般的な園地で10アールの植栽本数は約100本。基本に沿って、日がよく当たるようにする。作業は朝から夕方まで続く。

 接客業や格闘家、IT関係など、剪定班員の前歴はユニークだ。今期は10~40代の13人で構成。およそ10日間で12、13件の作業を代行する。決まったマニュアルはないが、毎回JA指導員が見本の木をつくる。初心者は経験者と一緒に作業しながら体で覚え、技術を高める。経験者も自分の癖を見つめ直す良い機会だ。

 班長の長渡孝太さん(38)は「(園主は)自分ではもったいなくて切れない木もあるが、剪定班が入ることで、木の形も良くなった」という。 剪定作業の受託は3段階の時給制で、初心者の研究生は750円でスタート。ある程度覚えると1000円に。1人で作業でき、後輩指導も担えるまで成長すると1500円になる。栽培経験の有無に関係なく、新メンバーは研究生から始まる。時給は互いの実力を確認しながら決めるため、トラブルはないという。

 無剪定園や1人では作業が困難な園地を優先で請け負う。剪定を委託した農家はJAに料金を支払い、JAが各メンバーの口座に振り込む。JAは手数料を取らない。

 JA管内は皮ごと食べられる完熟キンカン「たまたま」の主力産地。糖度16以上、直径28ミリ以上など厳しい出荷基準を満たすには樹上で完熟させる必要がある。4月上旬までに剪定を終えれば、結果母枝の生育に必要な期間を十分に取れるため、一番果の着果が安定する。高値がつく翌年1月15日の解禁日近くに多くの果実が出せるため、委託農家の利点も多い。

 若手の活躍で無剪定園が10%ほど減った。さらに、A品率と2L以上の大玉果率が上がり、JA産「たまたま」の出荷量は18年産が470トンと取り組みが本格化した11年より100トン増えた。取引市場も7年で拡大した。

 毎回、剪定班と一緒に作業するJA営農指導課の田中誠一さん(36)は「元々は慈善事業だった剪定班が若手の学びの場となり、基礎管理の剪定力が向上し、果実品質も高まった」と話す。最も重労働である剪定が解消できれば、栽培は続けられる。同JAを参考に、県内の他のJAでも「剪定班」の導入に乗り出す動きがある。

 剪定班のもう一つのテーマは「交流」だ。息子のために退職後、68歳でハウスキンカンを植えた久嶋さん。息子を亡くし、ハウス全22アール分を剪定班に頼った。「時給を支払うから」と若者任せにはせず、一緒にハウスに入り、落ちた枝葉を集めるなど、できる作業で協力する。

 1人だったら1週間以上かかる作業が1日で終わる。「若手と指導員がいてよかった。まだキンカンを続けていきたい」と久嶋さん。若手同士だけでなく、ベテランや指導員も巻き込み、部の力を高めている。

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