熊本地震から3年 田に潤い再び 待ちわびた用水再開へ 南阿蘇村立野地区

試験通水に期待を掛ける山内さん。農業の復興がこれから本格化する(熊本県南阿蘇村で)

 熊本地震の発生から14日で3年。地震で農業用水が途絶え、住民が稲作を断念している南阿蘇村立野地区で、月内にも農地への通水が始まる見通しとなった。通水が成功するかどうかは不透明な面もあるが、営農再開に道を開く大きな一歩となる。各地で復旧が進み、県は被災農家のほぼ全てが営農を再開したと強調するが、同地区の水田では、復興に向けた歩みがやっと本格化する。(松本大輔)

 地震に伴う土砂崩れで橋や農地が崩落するなどした同地区。幹線水路が途切れ、断水が続き、生活や農業に深刻な影響が出た。井戸の採掘などで生活用水は何とか手当てしたが、今も農業用水は十分に確保できていない。被災前に109戸が手掛けていた水田91・6ヘクタールが潤うことはないまま、3年の月日が流れた。

 「ここは本当に美しかった」。地区の水田2・7ヘクタールを管理する山内博史さん(65)は、雑草が茂る農地を前にかつての光景を思い浮かべながら、つぶやく。水を失った結果、地区の棚田には何も作付けせず荒れた所が点在する。

 それだけに、試験通水は農家にとっては久しぶりの朗報だ。幹線水路の復旧工事が落ち着いたことを踏まえて計画が浮上した。村農政課は、15日に現場確認した上で、早ければ月内にも水を通す段取りを描く。

 「土地を荒らしたい人はいない。水が流れれば雰囲気は変わる」。隣町の仮住まいから地区に戻ると決めた山内さん。通水を機に、集落再建に弾みがつくと信じる。「来年は田植えができるかもしれない」。その日を心待ちにする。

 一方で課題も残る。幹線水路は復旧したが、農地への通水が成功するかは、支線水路に懸かっている。支線水路は昔ながらの石積みで、一部が崩れている恐れがあり、工事が必要になる可能性もある。

 避難した住民が戻ってくるかも見通せない。これまでに戻ってきたのは360世帯のうち4割ほど。この3年、訃報が相次いだ。2012年の九州北部豪雨、熊本地震と続けて災害に遭ったため、帰還をためらう人もいるという。山には今も土砂崩れの爪痕が残る。安全対策が進むが、一層の安心を求める声が上がる。

 たとえ地区に戻ったとしても、水稲栽培を再開できない人も出そうだ。「農業から離れた間に、急に元気を失った人もいる。意欲があっても体力的に難しいかもしれない」(地区住民)。基盤整備を進め、農地を担い手に託す構想もあるが、将来像は固まっていない。これからが復興に向けた正念場となる。

 99・3%。2月末までに営農を再開した県内の被災農家の割合を、県はこう見積もる。順調な復興を印象付けるが、実態との温度差を指摘する声もある。同地区で農園を営む東海大学経営学部の木之内均学部長は、やむを得ず代替作物を栽培している例などもあるとして、現状を「真の復興とは言えない」と認識。引き続き支援が必要だと考える。
 

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