持続可能な農村開発 他国の協力で道開く 農業ジャーナリスト 小谷あゆみ氏

 西アフリカにあるコートジボワール共和国は、米(水稲)を主食とする地域が大半を占めますが、収量を見込むには肥料が高く、一般の農家には買えないため、不足分は輸入に頼っています。また貧しい農村部では栄養状態も悪く、動物性タンパク質が足りません。

 こうした問題を一挙に解決しようと取り組む日本人がいました。青森で飼料米卵の生産をリードしてきた石澤直士さん(59)で、ICA文化事業協会による農業専門家として、これまで培った技術や人脈で、純国産鶏「後藤もみじ」の原種卵を導入し、現地で生産する循環型農業へのチャレンジを始めたのです。

 無肥料だった水田に鶏ふんをまけば、稲の収量はアップします。増えた一部を飼料(鶏にはもみごと与えられる)にすれば、外部依存せず農村内で卵が自給できます。貴重なお米を餌にする反発は当然起こりましたが、11集落のうち、理解ある先駆的な農家4軒が始めたところ、10アール当たり200キロだった収量が、同460キロと2・3倍にアップしたのです。

 石澤さんによると、これでもまだ鶏ふんが少なかったそうで、もっと施せば3倍は期待できるそうです。これなら支援期間が終わっても、自立して営める持続可能な農村開発だと、他の集落もこぞって取り組むこととなりました。今後は年間1人30個の卵消費量を60個にする目標です。

 救世主となった鶏ふんの国内における価値をみると、NPK要素が豊富で手に入りやすい有機肥料ですが、それゆえに使い過ぎる傾向があり、国内ではリン酸富化の土壌が多くなりつつあるなど、さまざまな事情から敬遠されがちです。行き場がないと価値は下がりますが、行き先があれば資源として、経済をはじめさまざまな効果を生みます。日本農業は外国に何を供給できるのか。そう考えると、農産物の輸出にとどまらず、耕畜連携や循環、その他の技術といった「知」の財産で貢献する方が、関係は長続きします。

 国連の掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の17番目は「パートナーシップで目標を達成しよう」です。一国では解決できない課題も、他国との連携で包括的に解決する時代です。農資源という意味では、人材も資材も同じ宝です。海外の貴重な人的財産を、単なる労働力とみなすのか、目標達成のパートナーとして手を取り合う仲間にするのか。私たちのこれからが試されます。

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