自然・牛・人を一つの生態系として、共生と調和を目指す

 自然・牛・人を一つの生態系として、共生と調和を目指す。植物生態学者の猶原恭爾が提唱した「山地酪農」である▼〈山林を切り拓(ひら)き、シバを植え、乳牛を放ち、牛がのんびりと過ごし、自由に交配し、子牛を生み、牛乳が生み出され、糞尿(ふんにょう)を落とし、山が育ち、シバが再生され、それをまた牛が採食する〉。この農法に農村指導者宮本常一は「一つの運動となって盛りあがることを期待する」と共鳴した▼実践には並外れた意志の強さと忍耐力が求められる。山の斜面をシバ地に変えるだけでも10年以上はかかる。軌道に乗るまでは、不便な生活にも耐えるたくましさが欠かせない。実践者はごく限られるが、完成すれば「命」が循環し、生み出される牛乳は驚くほど良質となる▼そんな酪農の実現を目指し、千葉県から岩手県田野畑村に移り住んだ吉塚公雄さん一家を描いた映画「山(やま)懐(ふところ)に抱かれて」を試写会で見た。プレハブにランプ、7人の子どもを育てながら山を切り開く生活は、貧しさの中にも笑いがある。信念にこだわる父と成長とともに自我に目覚める子との相克は、筋書きのない人生ドラマでもある。家族の在り方を問い掛け、見る人の心を打つ▼地元のテレビ岩手が24年間にわたって追跡し、映画化した。27日から全国で順次公開される。 

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