マーケットイン 実需と対等の交渉力を

 「マーケットイン」に基づく生産が農業に求められている。消費者ニーズを踏まえた流通・小売業者らの要望に応える生産の推進こそ、今後の産地振興と農家の所得向上の鍵を握る。対等な交渉力を持ち、実需から選ばれる産地を目指そう。

 マーケットインとは、顧客の意見や需要をくみ取って商品を開発する取り組みを指す。最初に「商品ありき」のプロダクトアウトと反対に、最初に「顧客ありき」を軸に据える。どちらも優れた商品性が不可欠だが、マーケットインは継続的な販路と収益を確保しやすい。

 持続可能な農業生産と、安定的な農家所得の確保を目指すためには、そうした発想が大切だ。産地は買い手との結び付きを強めていく必要がある。

 日本農業新聞は2019年度、マーケットインに基づく生産・販売の新たな潮流を探ろうと「営農×流通」欄を設けた。本紙の営農面と流通経済面をまたぐ共通の土俵で、意欲的な主産地の動きと、流通・小売業界、消費者ニーズなどの動向を一体的に紹介する。安定的に取引できる売り先、売り方を模索する産地に応える企画である。

 例えば加工・業務用キャベツの動向を見ると、今後も有望な市場であると分かる。外食や中食が増え、家庭での調理時間を短縮したい消費者の意向が強いことを背景に、カットなど一次加工した野菜の需要は高い。主要品目の一つがキャベツで、特にサラダ用では群を抜く。

 カット野菜の製造・販売大手のサラダクラブは、全国130の契約産地から年間3万トン近いキャベツを調達する。国産重視の消費者が圧倒的との調査を踏まえ、扱う野菜の95%が国産だ。産地への注文も多い。定時・定量で、一定の品質基準をクリアしたキャベツを出荷しなければならない。

 契約価格での取引継続に、産地は不断の努力が欠かせない。愛知県JA豊橋キャベツ部会の有志は、大きくて歩留まりの良いキャベツの安定生産と計画数量の出荷に注力する。個々の農家段階でも欠品は許されない。その代わり多収栽培に特化でき、面積拡大や収益の安定確保が可能だ。加工・業務用に魅力を感じ、軸足を移す農家が増えているという。

 だが、産地に共通の悩みもある。異常気象が多発し、市況の乱高下が激しいことだ。契約取引は、不作で高値時の契約数量の確保が大きな負担になる。市況の変動幅が大きい場合は取引価格に反映させる仕組み作りも必要だ。産地同士が連携し、供給力を背景に大手実需と対等に交渉できる体制整備が急務だ。産地をつなぐJAグループの役割発揮を期待したい。

 マーケットインの産地づくりの例はさまざまだ。「顧客ありき」とはいえ、実需側の言いなりになる必要はない。実需も産地が伸びなくては困る。両者が共に納得できる関係を築き上げることが大切だ。

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