錦野旦さん (歌手) 素朴さにも一工夫 母の味

錦野旦さん

 グルメブームでいろいろおいしいものを食べに行くことがはやっていますけど、やっぱり食というのは母親の味なんですよ。おふくろの作った料理は、今でも記憶に残っています。

 実を言うと、おふくろは15で結婚したんですよ。僕は16の時の子なんです。僕を育てている時も、まだ子どもみたいなところがあったわけですよね。素朴な感じのものが多かったんですけど、ちょっとした工夫をしていました。
 

食欲そそる香り


 一番覚えているのは、きんぴらごぼう。油を垂らしてから、まずニンニクを入れるんです。味つけはみりん、トウガラシ、甘口と辛口の二つのしょうゆ。ニンニクがポイントなんですよね。粗みじん切りにしたものをパーッと入れ、香りがプーンと漂う。この香りが食欲をそそったんです。

 巻きずしもよく出ました。桜でんぶ、卵、かまぼこ、シイタケが入っていたのかな。田舎の味ですけど、僕にとってはこれこそが巻きずし。どんな高級店で食べても「これは違う」と感じます。

 鶏をまるまる1羽買ってきて、丸ごと蒸して甘辛い韓国風のたれを掛けてみたり、年末になると仕事で忙しいおやじの代わりに、臼ときねで餅をついたり。

 僕の生まれた大分県の名物に、だご汁があります。小麦粉で作った平らな団子を、野菜や肉と一緒に汁に入れて食べる料理です。

 40年も前のことでしょうか。お世話になった方に軽井沢の別荘に招かれた時、おふくろも連れて行ったんです。そこで僕が「故郷の味か何かを、お礼に作った方がいいんかなあ?」と言うと、おふくろも「そやなあ」と、だご汁を作ることに。その時、作る様子を初めて見たんです。沸騰したお湯に、団子を素早く丸めてのばして入れていく。「のんびりしてると、先に入れたのが溶けちゃうから」と。器用で早くて驚きました。こうして作ってくれてたんだと感心したことを覚えています。
 

トマト欠かさず


 今は家内が、いろいろと工夫をして料理を作ってくれています。家内はファッションの仕事をしていたこともあって、僕の体形の維持について気を使ってくれています。1日3回きちんと食事をする、タンパク質をたくさん取る、食べる時には野菜から・・・・・・と。

 朝食は、薄いハムと溶けるチーズをのせて、シナモンと蜂蜜を掛けたトーストを1枚。それにたっぷりの野菜。今日はトマト、レタス、パプリカ、ベビーリーフでした。これに納豆とごまを加え、ドレッシング代わりに昆布つゆを掛けます。果物も大事で、リンゴとバナナと梨にヨーグルトを掛けていただきました。365日、このような朝食です。

 特にトマトはどんな日でも必ず食べています。ファンの方が、大分県日出町(ひじまち)の真那井農園の「トマ王潮」を送ってくださって、大ファンになりました。海水を利用して作るそうで、ちょっと硬めで塩の味がして、それが甘味を引き出してます。

 外食する時でも野菜のおいしい店がいいですよね。僕には行きつけのフレンチレストランがあります。カモ料理が目当てなんですけど、シェフの実家が栃木で作っている野菜もおいしくて、毎回喜んで食べています。

 素晴らしい野菜を頂くと、農家の方々への感謝の気持ちが湧いてきますよね。この年になると、楽しみといえば食べること。農家の皆さんのおかげで楽しく過ごせているわけです。(聞き手・菊地武顕)
 

 にしきの・あきら


 1948年、大分県生まれ。70年に「もう恋なのか」でデビューし、レコード大賞最優秀新人賞を受賞した。翌年「空に太陽がある限り」が大ヒット。“スター”として歌番組を席巻した。近年は夫人(力丸ヒロ子)とのトークショーでも人気を集める他、シニア水泳の大会で活躍中。 
 

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