平成が終わり昭和はさらに遠くなる

 平成が終わり昭和はさらに遠くなる。経済の切り口で、二つの時代を見ると、「一億総中流社会」の昭和から、「格差社会」の平成へと、日本は大きくかじを切った▼昭和の経済史を語る上で、書き留めておきたい逸話がある。「人間のための経済学」を希求し、5年前に他界した宇沢弘文東大名誉教授が、意外にも昭和天皇に大きな影響を受けたというのである。自著『経済学は人びとを幸福にできるか』の中で、その秘話を明かしている▼元々天皇制に批判的だった宇沢さんが、文化功労者に選ばれ宮中で昭和天皇とお会いすることになった。しかも学説を説明する羽目に。「ケインズの考え方はおかしい」「社会的共通資本が必要です」。緊張のあまりしどろもどろになった▼すると業を煮やしたように陛下が、説明を遮りこう言われた。「君! 君は、経済、経済というけど、人間の心が大事だと言いたいのだね」。この言葉は、宇沢さんにとって「青天のへきれき」で、「コペルニクス的転機」になった。以来、20年近く「人間の心を大事にする経済学」を追求し、文化勲章の栄誉に浴した▼人間の経済学に生涯をささげた宇沢さんと人間として国民に向き合った昭和天皇。経済が人間を支配する時代にあって、在りし日のお二人のやりとりに思いを致す。

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