豚コレラ 安心へ手厚い対策急げ

 豚コレラが養豚場で最後に発生してから13日で3週間となる。20日間以上の未発生は1月29日に岐阜県で再発して以来だが、油断は禁物。野生イノシシでウイルス陽性の個体が見つかり続けている。感染への恐怖と闘い続ける農家の心労、心痛は計り知れない。政府は疲弊する農家に寄り添い、手厚い対策と丁寧な説明が求められる。

 11日時点で、最後に養豚場で発生が確認されたのは4月22日の愛知県瀬戸市。防疫措置終了の関係で、制限区域が最後に解除されるのは同県田原市で、5月24日の見通しだ。岐阜県では21日の恵那市で、最後の制限区域が解除される見通しだ。

 ただ、野生イノシシは終息を許してはくれない。ウイルス陽性となったイノシシは昨年9月から今年5月8日までに、岐阜県内で390頭。捕獲の総数は1096頭で、陽性率は36%に上る。特に4月は陽性が135頭と、他の月の3倍ほどが見つかった。愛知県内では、捕獲263頭のうち陽性は15頭。頭数は少ないがウイルスは潜んでおり、要警戒が続く。

 野生イノシシへの対策として岐阜、愛知両県ではワクチン餌の設置が進んでいる。3月下旬に設置した1回目では、ワクチン餌を由来とする抗体を持った可能性がある個体は、現時点で9頭にとどまる。捕獲した陽性個体の10%ほどだ。

 ワクチン餌は、岐阜県内で設置した2万4000個の約7割、愛知県内で設置した2400個の6割が食べられたとみられるが、抗体の効果が十分とは言えない状況だ。2回目は設置の範囲を広げ、餌の設置個数を変えるなどの措置を取った。農家が経営を再開した後の不安を拭い去るためにも、野生イノシシのウイルスまん延を封じ込める必要がある。

 今回の豚コレラウイルスは感染初期から検出、発病までの期間が長く、症状が緩やかで感染の確認が難しい。野外で陽性イノシシが増えて農場への感染リスクが高まる中、気を緩められない。

 今後も発生が続くようなことがあれば、養豚農家や畜産関係者が受けるダメージは一層、大きくなる。農家や専門家からは飼養する豚へのワクチン利用を求める声が日増しに高まっている。政府はワクチン接種についてどう考えるのか、農家に丁寧に説明する必要がある。

 貿易自由化が進むほど、家畜疾病のリスクは確実に増す。アフリカ豚コレラは、国内への侵入を水際で食い止めているが、中国では全土に拡大。周辺のモンゴルやベトナム、カンボジアにも広がった。日本の空港では、中国とベトナム便の旅客が持っていた肉製品からアフリカ豚コレラのウイルス遺伝子が見つかっている。

 ワクチンのないアフリカ豚コレラが侵入すれば、事態はさらに深刻となる。豚コレラの一日も早い終息と、畜産農家が心底安心できる対策が求められる。 
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは