温室ガス新指針 足元から着実な削減を

 2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の締約国が活用する、温室効果ガス排出量の算出方法を示した指針が公表された。最新の知見を踏まえた、より正確な指針の下で、政府は温室ガスの排出抑制、吸収源対策を急ぐべきだ。

 新たな指針は8~12日に京都市で行われた国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第49回総会で合意された。現在の指針では盛り込まれていない水素製造に伴う温室効果ガス排出量の計算方法を加え、稲作で発生するメタンの排出量を精度を高めて計算できるようにしたのが特徴だ。年末に開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議の合意を経て、正式導入となる。

 パリ協定は、全ての締約国に二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出量の報告を義務付ける。新たな指針によって排出量が明らかになれば、対策の検証が可能になる。各国が定める削減目標に対してチェックし合える体制ができ、対策を効果的に進めることができる。

 CO2の排出量は、年々増え続けている。国際エネルギー機関が発表した18年の世界のCO2排出量は、前年比1・7%増の約330億トンだった。

 日本国内の観測地点の濃度も過去最高を更新し続けており、増加に歯止めがかからない。17年度の温室効果ガスの総排出量は、CO2換算で12億9200万トン。うち農林水産業からの排出は、5154万トンで全体の4%を占める。

 15年に採択されたパリ協定は、産業革命からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えることが目標。197カ国・地域の全締約国が温室効果ガスの削減目標を掲げ、対策に取り組む。

 IPCCの李会晟議長は新たな指針について「温室効果ガスの報告の透明性が高まる。パリ協定の目標実現に向けたプロセスも成功に導けるだろう」と強調した。

 農業分野で温室効果ガスを排出するのは水田や牛のげっぷ由来のメタンガス、加温機からの排気ガスなどが挙げられる。水田であれば間断かんがいや、稲わらのすき込み時期を春ではなく秋の収穫後すぐにすることで発生量は削減できる。

 農地への緑肥や堆肥の投入による炭素隔離・貯留も有効だ。「世界の土壌中の炭素を毎年0・4%増加させることができれば、大気中のCO2濃度の上昇は止められる」との農研機構の試算もあり、改めて注目すべき基本技術だ。

 相次ぐ集中豪雨など異常気象による水稲の白未熟粒、果実の日焼け、着色不良──。作物に日々触れている農家だからこそ異変を肌で感じ取っているはずだ。地球で暮らし続けるためには温暖化に「適応」することも必要だが、「抑制」策も欠かせない。新指針を踏まえ、足元から着実な削減を進めよう。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは