新時代の農業技術 消費者意識して導入を

 時代を先読みした技術を取り入れよう。キーワードは「マーケットイン」と「スマート農業」。消費者が求めているものを的確に把握し、それに応じた生産に取り組むとともに、新しい技術をどう生かしていくか。時代のニーズに応じた生産や技術の導入が求められている。

 マーケットインの生産とは、消費者ニーズを栽培に取り入れようとする取り組み。日本農業新聞営農面の「農業技術ネクストエイジ」では平成の時代に開発されたり、広く普及したりした技術や品種を連載した。

 その中で、かんきつのマルチ・点滴かん水同時施肥法(マルドリ栽培)や根域制限栽培を紹介した。水分を与える量を制御することで、糖度を高める技術だ。消費者が求める甘いかんきつが生産できるとして、産地に広く普及した。

 出荷作業も同様だ。果実を切ることなく、糖度を測ることができる光センサーを取り上げた。花きのバケット輸送システムは、生花を長く楽しみたいという声に応えた技術。バラなど鮮度保持が難しい品目でも、日持ちの向上につながった。

 安全・安心は当たり前になった。化学合成農薬を減らし、天敵などを取り入れた総合的病害虫・雑草管理(IPM)は、広く普及した。一方、長期的な影響を踏まえ「安心できない」という消費者心理が働いた遺伝子組み換え(GM)技術や体細胞クローン技術は、普及につながらなかった。今夏にも流通する可能性があるゲノム編集で作られた作物も、消費者が安心して購入するのか。産地は見極めが必要だ。

 少子高齢化に伴う人口減で日本の「胃袋」は年々小さくなっていく。貿易自由化で輸入農産物は増え、消費者に選ばれる産地をどうつくるかが、重要になっている。食味や鮮度、安全性、食べやすさ、便利さなど時代のニーズに的確に応えられる技術が求められる。

 農村の高齢化や担い手不足に対応するため、連載企画では水稲の直まき栽培や不耕起V溝直播(ちょくは)、高密度播種育苗が進んだことを取り上げた。少ない労働力でも、大きな面積を耕作することができる技術だ。果樹の樹体ジョイント仕立ては高密度に苗を定植し、隣の木に接ぎ木する手法。樹高が一定で直線状に作業ができ、効率が高まる。酪農は規模拡大に合わせたユニットミルカーやミルキングパーラー、搾乳ロボットを紹介した。

 労働力不足は今後、さらに深刻化する。それを補う人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)、ドローン(小型無人飛行機)などを駆使したスマート農業は課題解決の一つの手法ではあるが、農業のあらゆる課題を解決できるわけではない。

 ゴールは、作る側と食べる側がつながり日本農業を再生することだ。そのためにも、消費者を意識した技術の導入が不可欠である。 

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