吉田照美さん(ラジオパーソナリティー) メイン料理よりデザート

吉田照美さん

 僕は基本的に“お子様口”なんですよ。子どもの頃から現在まで、ずっと果物やスイーツが好き。メインの料理よりデザートの方がおいしいと思っていて、そちらの方に期待しているんです。
 

口中にずっと・・・


 子どもの頃といえば、今のように食べ物にあふれていたわけではありません。ですから親は工夫をしたんですよね、ゆっくりじっくり時間をかけて食べるようにと。例えば、梅干しをタケノコの皮にくるんで食べさせていました。すぐ食べるんではなく、皮に染みた味を吸わせる。ワンクッション置いてから、ようやく梅干しを食べるわけです。水あめもグルグルと巻いて白くさせる。誰が一番白くなるかと競わせていたわけです。

 遊んでいる時に、やけに口の中が膨らんでいるやつがいました。そいつはゆで卵を食べていて、白身は先に食べちゃって、でも黄身も食べてしまうのはもったいないから、ずっと口の中に入れたままにしてたんです。

 ヨーグルトを初めて食べたのは、幼稚園か小学校1年生の時。初恋の女の子の家が、ゴム会社の社長さんで裕福だったんですね。その子の誕生日会に呼ばれて行ったら、出てきたんですよ。牛乳の腐ったものかなと思ったんだけど、おいしいからありがたく食べた。後になって、それがヨーグルトだとわかったんです。

 そんな時代ですから、たまに食べる甘い物は大好物。それにうちの親は果物だけはたくさん与えてくれたので、甘い果物も大好きでよく食べました。僕の味覚はその当時から変わらず、そのまま大人になったんです。酒は苦手で、ワイン1杯も飲めば十分なくらい。
 

“グルメ”は欺瞞


 ワインについていろいろとうんちくを垂れる人がいて、世の中はそういう人をおしゃれでかっこいいとみなすでしょう。その風潮は正直いうと気に入りません。

 僕がうんちくを垂れられるのは、果物だけなんです。イチゴなら「さくらももいちご」がいいとか、桃なら岡山の白桃がいいとか。でも果物について同じように語り合える人がいないんですよ。ある日、仕事で一緒になったシティボーイズの斉木しげるさんと、果物話で盛り上がったんです。そんなこと初めてでうれしかったですねえ。

 うんちくといえば、テレビの食番組では、一口食べた後にいろいろ語彙(ごい)を使って表現するでしょう。僕はそれを見て、しゃらくさいと感じるんです。本当においしいものを食べたら、言葉なんて出ないはず。欺瞞(ぎまん)の世界ですよ。この風潮もなんとかしたい。

 僕にとっての究極の食事は、おいしいご飯に卵と納豆を掛けて、みそ汁と野沢菜でいただく。最後の晩餐(ばんさん)には、ぜひともこれを食べたいです。「いただきます」という言葉から食べ始め、終わった後に「ごちそうさまでした」と心から感謝の言葉が出るような食事。それが一番です。

 僕らは豊かではない時代に育ったから、おいしい料理への感謝の気持ちを持てます。飽食の時代に育った子どもたちは当たり前のように食べているので、おいしさに対する感覚が鈍いでしょう。逆にかわいそうな気がします。

 お金持ちがいくらおいしいものを食べても、その感激は薄いと思いますよ。そう思いたいです。新聞の首相動静を見ると、安倍さんは毎日豪華なものを食べているようですね。でもきっと感激はないはず。気の毒な方だと思いますよ。それくらい言っておきたいですね、庶民としては。(聞き手・写真=菊地武顕)
 

 よしだ・てるみ


 1951年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送に入社。78年から「セイ!ヤング」、80年から「てるてるワイド」を担当し、大人気を博した。85年に退社し、フリーとして活躍。油彩による風刺画家の一面も持つ。6月14日、東京・文化放送メディアプラスホールで、イベント「ロバフェス!」開催。 
 

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