小農の大逆襲 人々集い豊かさ共鳴 農業ジャーナリスト 小谷あゆみ氏

 国連による「家族農業の10年」や「小農の権利宣言」が採択され、小農の再評価が高まっています。先日、福岡市内で開かれた「小農学会」シンポジウムに参加してきました。「小農」とは、利潤追求よりも暮らしを目的に営む農業のことで、いわゆる家族農業を指しています。

 「小農学会」は、鹿児島大学名誉教授の萬田正治さん(77)と、佐賀県唐津市の農民作家、山下惣一さん(83)の2人を共同代表に、2015年に設立されました。

 霧島市で合鴨(あいがも)農法を主体にヤギも飼養し、有畜複合経営を営む萬田さんは研究者時代、アイガモによる無農薬で循環型の米作りを実現させ、全国の農家と出会う中で、産業としての農業と暮らしとしての農の二つは、区別して論じるべきだという考えに至りました。

 同じく山下さんは、『小農救国論』や『市民皆農』など多数の著作で知られ、そもそも農業とは、成長や拡大ではなく、代々持続することが目的であり、企業経営には無理があること。また、自給農家が農林統計から無視されている点を指摘し、大規模化や経済効率という単一の価値観だけではなく、地域の暮らしや農村が持つ多様な豊かさを世に伝え続けています。

 今回、シンポジウムに集まった70人のうち半数は農家ではなく、環境や食、地域の存続に危機感を持つ市民たちです。実はそれがこの会の強さを表していました。農村と都市は一般に、生産者と消費者に分けられがちですが、小さな物差し(地域やコミュニティーの規模)で見ると2者の関係は、ご近所さんや親戚、友達です。そこに農産物のお裾分けといった物々交換はあっても、金銭のやりとりはまずありません。では、経済を生み出さない農家は、何を育てているのでしょう。

 萬田さんは昨年、「霧島生活農学校」をつくり、納屋を改築したカフェも始めました。人気は合鴨ランチで、地域内外の人々が集う場となっています。育てているのは、農産物はもとより、農を学び、語り合う拠点なのです。

 学会も農学校もカフェも、言うなれば小農の「見える化」です。沈黙していた小農たちが立ち上がり、存在をアピールする“小農の大逆襲”が始まっています。この声に共鳴することは、自分たちの足元を守ることにほかなりません。水を張った田んぼ、懐かしいあぜ道、おいしいお米。当たり前と思っていた古里が失われたとき困るのは誰か。私たちはいつになったら気付くのでしょう。

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