市場開放 単月評価の危険 政府試算覆す品目も 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏

 米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)が2018年12月、EPAも今年2月に発効。1年目の関税削減が発動され、さらに4月には、ともに、早々2年目の関税が発動された。

 関税切り替えの1、2、4月に、牛肉、豚肉、チーズ、ブドウなどの輸入が急増したが、これには、それに合わせて輸入をずらした一時的な効果も含まれるので、よく見極める必要がある。4月までの貿易データが財務省から公表されたので、ここ数カ月のデータを総合した現時点での評価を試みる。1月には前月の輸入を控えて回された分を考慮するため、18年12月から19年4月までの5カ月間の数量を吟味した。

 1月と4月の牛肉輸入は全体で前年同月比42%、8%と増え、最大の輸入先国のオーストラリアからも40%、7%増。カナダ・ニュージーランド(NZ)・メキシコからの輸入は急増し、前年同月に比べて米国のシェアは低下した。

 ところが、12~4月の合計では、全体で8%増え、オーストラリアはほぼ横ばい(0・1%減)で、輸入に占めるシェアは3カ国合わせて1割と小さいカナダ・NZ・メキシコは50~70%増と大幅に増えているが、米国も9%増えて、米国のシェアは微増(0・3ポイント増)、と様相が一変する。

 オーストラリアが増えていないのは、既に日豪EPAが先行発効して、TPP11、日欧並みの関税削減が実施済みだった帰結といえる。一方、カナダ・NZ・メキシコは3カ国まとめると、8・6%の価格下落で68%の輸入増、つまり、単純には1%の価格下落が8%の輸入増につながった計算になる。

 2月と4月だけ見ると、豚肉輸入は全体で20%、23%伸び、EUは54%、47%も伸びた。しかし、その前月の輸入控えが大きいため、12~4月の合計では世界全体からは前年同期比で横ばい、EUからは1・2%減少した。スペインも2、4月は44%、35%増なのに、12~4月の前年同期比では3・1%減になって、評価が完全に覆る。

 チーズは4月だけだとEUから57%増、全体でも34%増と、大幅な輸入増。12~4月の累計でも、EUから18%増、全体で6%増と、かなりの増加となっている。

 ブドウはTPP11で17%の関税が即時撤廃され、12~4月で12%伸びた。特に最大シェアのチリ産は、既に日チリEPAで4・3%まで下がっていた関税が撤廃され、60%も伸びた。1%の価格下落に対する輸入増は15%と異常に高い反応だ。「生鮮果実の関税撤廃の影響は全くない」としてきた政府試算の前提を完全に覆す現実がある。

 以上から、単月評価の危険性が強く認識される。また、関税削減による1%の輸入価格下落がもたらす輸入増が、8%や15%という非常に高い反応を示す場合もあることから、これまでの想定以上に「大幅な輸入増加→国内生産を圧迫→急激な自給率の低下」をもたらす可能性がある品目もあることが認識される。

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