林業の人材不足 労働環境の改善を急げ

 わが国の森林は、人工林を中心に木材資源の本格的な利用期を迎えている。林家の高齢化や林業経営体の弱体化で伐採できず、宝の持ち腐れになる恐れが指摘されている。人材確保に向け、林業経営体の労働環境の改善を急ぐ必要がある。

 林野庁は3本の柱をてこに林業改革に取り組む考えだ。第一に、森林所有者に代わって民間企業等が主伐や間伐、造林ができる新しい「森林経営管理制度」の導入だ。これを“エンジン”に、本格的な山の手入れや伐採に乗り出す考えだ。林業経営に適さない森林は、所有者に代わって市町村が管理する。

 第二に、森林環境税の導入だ。1人当たり年1000円を個人住民税に上乗せして徴収し、年間600億円の財源を確保。森林の管理や、間伐、担い手確保、木材利用の促進などに充てる。

 そして、第三が人材育成・確保である。「伐(き)って、使って、植える」という循環利用を担うための人材を確保することである。2018年度の林業白書は人材の確保に焦点を置き、当面する大きな課題と位置付けた。その認識に異論は無い。

 事実、地域の森林整備の担い手で、植林、下刈り、間伐の受託面積の6割を占める森林組合の9割が人材不足だ。また、民間事業体も中小規模が多く、後継者の確保が課題であることを浮き彫りにした。安い外材に頼って国内林業を軽視してきた結果である。

 人材不足の解決の方向として白書は、機械化や情報通信技術(ICT)などの新たな技術の導入でコスト削減を進め、林業従事者の労働条件の改善に取り組む必要性を強調した。実際に成果を上げた事例も示した。労働条件の改善は、人材確保の有効な手段であり、方向性は一定に理解できる。

 しかし、全産業的な労働力不足の中で、人材を確保することは容易ではないはずだ。賃金や休日の確保などの労働環境の改善を国家的に支援するとともに、林業の魅力を若い人にPRする必要がある。林野庁は、その具体策を早急に示すべきだ。

 林野庁が取り組む改革で懸念されるのが、伐採だけが進んで“はげ山”になることだ。民有林に加え、国有林に関する法改正では長期の「樹木採取権」を企業に与えることになった。植林を怠らないよう適切に指導すべきだ。また、山村振興に取り組む小さな林業経営を排除するようなことがあってはならない。

 今後、森林管理で市町村の役割が高まるが、林業に詳しい職員はごく一部に限られる。市町村の林務担当職員を増やすなど市町村の体制充実も必要だ。

 森林をきちんと維持するための基本は、現地に住む林家の経営を安定させ、きめ細やかな森の管理が行えるように環境を整えることだろう。後継者が育つように新しい技術の指導や国産材の販売先の確保などでの支援が必要だ。急ぐべきである。 
 

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