先人の足跡をたどる歴史探訪は人を魅了する

 先人の足跡をたどる歴史探訪は人を魅了する▼山口市に国宝瑠璃光寺五重塔で有名な香(こう)山(ざん)公園がある。作家の司馬遼太郎は、大雨を押して訪れた時のことを『街道をゆく一』(朝日新聞社)で書いている。「(長州は、いい塔をもっている)と、惚(ほ)れぼれするおもいであった。長州人の優しさというものは、山口に八(はち)街(がい)九(きゅう)陌(はく)をつくった大内弘世や、ザビエルを保護した義隆などの大内文化を知らねばわからないような気もする」。幕末の動乱を通じて怜悧(れいり)とされる長州人に深い優しさを感じ取ったのだろう▼南北朝時代に山口に本拠地を置いた大内弘世は、都を離れて泣き暮らす夫人を慰めようと、京都を模した街を作った。宮廷の形をとり、山川や仏寺神廟(びょう)、言葉まで京風にした。山村に残る「典雅なひびき」を持つ〈山口ことば〉が出来上がったのは、「弘世のときからかもしれない」と司馬は思いをはせる▼薩長(さっちょう)同盟の舞台となった枕(ちん)流(りゅう)亭が移築されている。薩摩から西郷隆盛、大久保利通、小松帯刀ら、長州から木戸孝允、伊藤博文、品川弥二郎らが対面し、倒幕へ盟約を交わした。さほど広くない階上。高揚した面持ちの面々が浮かぶ。近代日本の曙(あけぼの)である▼窓からは凛(りん)とした五重塔が見える。志士たちの気高さを誇るようでもある。 
 

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