[実証始まる スマート農業](1) 水稲大規模法人(新潟市)×自動操舵、ロボトラ… “1年生”がベテラン級

導入したロボットトラクターをチェックする荒木代表(左)と松田さん(新潟市で)

効率上げ園芸拡大へ


 「就農1年生がトラクターも田植え機もまっすぐ運転できる。水管理もスマホで一瞬だ。農業が、誰でもできる時代が近づいた」

 今春、スマート農業技術を導入した新潟市の農地所有適格法人(農業生産法人)白銀カルチャーの代表、荒木康男さん(66)は、導入したロボットトラクターに手を触れながら、力説する。働き手によって作業の技術や経験に差があることが長年の悩みだった。農機の自動操舵(そうだ)やロボットトラクター、自動給水栓を使ったことで、課題克服への光明が見え始めている。

 同法人は、さまざまな農業技術を2年間かけて実証する。荒木さんは「便利でも高価過ぎるもの、使用条件が限られるものなどさまざまだ。どれが使えてどれが使えないか、冷静に見ていかなければならない」と指摘する。

 荒木さんの法人では水田約100ヘクタールで米や大豆を作る。近隣の農家から農地を託され規模を拡大した。地域の雇用就農を支えようと若手を雇い、社員7人全員が20、30代。しかし若い働き手は農業経験が浅く、一から作業を教えると習熟に差が生まれていた。

 自動操舵システムとロボットトラクターの導入でその状況は一変。自動操舵システムは農機のハンドルに後付けし、衛星利用測位システム(GPS)で向きを真っすぐ保つ。「田植えがくねくね曲がっていた社員もベテラン並みに真っすぐ。今後の管理作業がやりやすそうだ」(荒木さん)

 ロボットトラクターは、監視者の乗るトラクターの近くで作業する。例えば、隣り合った2枚の水田で、片方は有人、片方は無人と、1人で2倍の作業ができる。作業した松田秀之さん(27)は「通常1ヘクタール区画の代かきには3、4時間かかるが、ロボットトラクターが自動でやってくれる。それでいて作業も正確。ロボットとの作業がなんだか楽しくなった」と笑う。

 ベテランの勘と経験が重要だった水管理は、誰でもできるようになった。自動給水栓はスマホで開閉でき、水がたまれば自動で閉まる。法人では1人で3人分、20ヘクタールほどの水管理が可能になった。

 同法人は今後、ドローン(小型無人飛行機)による防除、農地ごとの収量データが分かるコンバインなど、一通りのスマート農業技術を導入する。米麦主体の同法人は、収益向上や通年作業の確保のため、エダマメやトマトなど園芸品目で多角化を進めている。スマート農業で水田農業を大幅に省力化し、園芸品目への労働力を捻出する。

 荒木代表は「スマート農業の効果が話題になりがちだが、技術は経営のためにあるという考えが大切。便利でも本当に経営にプラスになるか、しっかり見極める2年間にしたい」と力を込める。

 スマート農業の普及に向け、農水省のこれまでにない大型実証事業が始まった。採択された課題は全国で69件、関連予算は50億円を超える。19年は、“スマート農業元年”。何ができて、農家はどう助かるのか。中山間地でも使えるのか。実証に取り組む産地の声を通し、スマート農業の現状と課題をひもとく。 
 

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