有機農業の推進 問われる政策の実効性

 今後の有機農業の推進について農水省の審議会が中間まとめをした。目的を明確にし農業全体の中で振興していくという。意気込みは分かるが、それを形にしていくための政策支援が心もとない。危機的な地球環境や農村の現状を踏まえ、実効性のある推進策を作らねばならない。

 有機農業推進法は、おおむね5年ごとに基本方針を見直すとし、今回は2020年度からの施策に反映される。農水省は8月末をめどに推進策の枠組みを固める予定だ。

 「有機農業を全国の耕地面積の1%に倍増させる」。前回の基本方針は18年度までの普及目標をこう明示した。結果は0・5%と足踏み状態が続いた。なぜ拡大しなかったのか。その原因を分析しなければ、次の飛躍は望めない。

 秋田県立大学の酒井徹准教授は有機農業の課題を「生産」「流通」「消費」「政策」に分け検証している。生産面では供給量と品質の確保が難しく計画出荷ができない。しかも担い手は新規参入や移住者が多く、経営の確立は容易でない。

 政策面で欠かせないのが技術支援と生産者の所得補償だ。予算措置として環境保全型農業直接支払交付金24億円があるが、農水省予算のわずかに0・1%。このうち有機農業の占める割合はさらに低くなる。酒井准教授は「有機に振り向けられる予算は低水準」と、普及しない一因に挙げる。

 流通の課題も大きい。生産者は零細で全国に点在し、物流は個々に対応せざるを得ない。既存の流通や施設を利用して共同輸送や共同荷受けができないものか。JAの流通網を使ったり、業者が協力し合ったりして物流費を下げる努力が必要だ。

 農水省は有機農産物の市場規模を1850億円と推計、今後の成長分野と位置付ける。スーパーや専門店、インターネットなど売り方が多様化し、購買層の裾野を広げている。ただ国産有機の果実や畜産製品、加工品は種類や量が少ない。有機市場の拡大に伴うスーパーや外食の要望に応えられるよう、JAが産地化に取り組み、発展させていかなければならない。

 環境問題や国際社会の動向も注目すべきだ。有機農業は地球温暖化防止や生物多様性の向上に貢献している。国連の持続可能な開発目標(SDGs)を見据え、新たな推進策には長期的で継続的な手だてを講じることが求められる。

 農村は耕作放棄地の増加、高齢化が進んでいる。そうした地域で新規参入の若者が有機農業に取り組むのを後押しし、再生産できる価格で、経営的に成り立つ具体策作りを急ぐ必要がある。

 生鮮品の規格緩和、加工業者と連携した商品化の支援なども積極的に進めるべきだ。時代のニーズを捉えた有機農業は、地域振興の鍵になる。政策の実効性が問われている。

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