[実証始まる スマート農業](2) 中山間地(福島県南相馬市)×「みちびき」活用のドローン 条件不利地でこそ

実証試験の核を担うドローンを整備する清信さん(福島県南相馬市で)

自動・精密の新体系


 福島県南相馬市の水稲作の農業法人、アグリ鶴谷で代表を務める清信眞一さん(69)は、ドローンを最大の武器と位置付ける。

 ドローンの整備をしながら、こう言い切る。「スマート農業は大規模農家だけのものというイメージが独り歩きしている。中山間地域や離島など条件不利地でこそ使えることを実証したい」

 同法人は水位センサーなども取り入れ、中山間地域ならではの作業体系を模索する。収量の5%増、農薬散布などの労働時間の3割削減が目標。震災復興にもつなげる。

 同法人は2年前に設立。水稲を計16ヘクタール栽培する。実証試験はその半分の面積で、県オリジナル品種「天のつぶ」が対象。同品種の目標収量である10アール当たり600キロを実証で上回る狙いだ。

 ドローンは農薬散布に活用している。新たに水田の撮影や人工知能(AI)による生育診断・追肥や病害虫防除などに用いる。ドローンは、無人ヘリコプターに比べて安価で小回りが利く。高齢化が進み、狭い水田が多い中山間地域でこそ威力を発揮すると清信さんは考える。

 期待するのは準天頂衛星みちびきを活用したドローンの自動化だ。一般には衛星利用測位システム(GPS)で機体の位置を確認して飛行を自動化する。しかし、中山間地域では、GPS電波が山に遮られて位置測定に誤差が生じる。日本のほぼ真上にあるみちびきならば、電波妨害がなく、誤差を抑えられる。同法人は7、8月からみちびきに対応したドローンの運用を始める予定だ。同県は中山間地域が7割超を占める。実証で連携するNTTデータは「2年間をめどに事業化を目指したい」と力を込める。

 同法人は水田1枚ごとの水位や温度などをスマートフォンで確認できる水位センサーを導入している。「家にいながら状況が見える。水田の見回りが減って水管理が楽になった」と清信さん。中山間地域の水田は畦畔(けいはん)が大きくて急なところも多く、高齢者は足を滑らせる危険性もある。こういった不利な条件をスマート化で対応し、将来の経営規模は60ヘクタールまで広げる考えだ。

 県内の10アール当たり労働時間は21・26時間だ。このうち肥料・農薬の散布、水管理作業にかかる時間は計5・49時間。実証ではこれら作業時間の30%削減を目標にする。だが、ドローンを使った農薬散布では農薬積載量が少ないことや、操縦者の技量の差といった課題がある。

 同市鶴谷地区は、東京電力福島第1原子力発電所事故に伴い避難指示を受けた。指示解除で地域住民が戻り始めたが、若者は少ない。清信さんは「注目を集めることも実証の目的。元気に最先端の農業ができることを発信し、多くの若者に戻ってもらいたい」と期待する。

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