低調な党首討論 「真実」に背を向けるな

 国会の形骸化を象徴するような党首討論だった。疑問に正面から答えようとしない安倍晋三首相、追及の攻め手を欠く野党。とにかく時間が短過ぎて、論戦の深まりようがない。消化不良のまま農政不信も募る。「言論の府」が泣いている。

 党首討論は実に1年ぶり。今国会初である。7月の参院選を控え安全運転に徹したいのか。政府・与党の国会運営は極めて後ろ向きだ。会期末にやっと実現した党首討論だが、立憲民主党、国民民主党、共産党、日本維新の会の野党4党代表との討論時間は、全体でわずか45分にすぎない。

 実績を誇示し論点をそらす安倍首相、「見せ場」づくりに躍起になるが攻めあぐねる野党。議論はかみ合わず、主張の応酬に終始した。かつての党首討論では「解散宣言」する場面もあったが、今回首相は改めて解散を否定してみせた。

 野党第一党の立憲民主党には、内閣不信任案提出で解散・総選挙に追い込むという気構えも迫力もなかった。問責決議案をにおわせた時点で足元を見られてしまうのは当然だ。枝野幸男代表は党首討論後に内閣不信任案提出を示唆するなど、野党連携のちぐはぐ感は否めない。

 論戦は、老後の資金問題に終始した。「2000万円不足問題」で露呈した年金制度への不安に政治はどう応えるのか。本当に「100年安心」なのか。野党の追及に対し、首相から説得力のある説明は聞けなかった。むしろ「不都合な真実」に背を向ける政権の姿勢があらわになった。

 山積する内政・外交課題は素通りされた。とりわけ日米貿易協定交渉を巡る論戦を期待した農業者は落胆したことだろう。トランプ米大統領との間に「密約」はなかったのか。疑念は晴れないままだった。

 どれも短時間で掘り下げられるテーマではないが、首相はこれらの課題に真摯(しんし)に向き合っていたか。異論や反論に謙虚に耳を傾けていたか。首相が常々言っている「事実に基づく丁寧な説明」が果たされたとは言えまい。新自由主義的な市場原理優先の経済政策をこのまま推し進めていいのか。野党はその本質論議にもっと踏み込むべきだった。

 2000年に導入された党首討論だが年々低調となり、昨年は1回、一昨年は開かれなかった。これでは存在意義が問われる。「言論の府」である国会改革の必要性を痛感する。議員定数や国会審議の在り方に加え、党首討論の実効性を高めるため厳格に定例化し、論戦の時間を確保すべきだ。

 政治は言葉である。国会は、多様で開かれた論戦を通じて、合意形成を図る場だ。それが国民の負託を受けた政治家の責務だ。国民もまた政治家の言動に絶えず厳しい目を向け、正当に評価する能力を養いたい。政治の劣化は、それを許す国民が招いた結果でもあるのだから。

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