G20とWTO改革 多国間協議の原点戻れ

 28日からの20カ国・地域(G20)首脳会議を前に、米中激突の影響が広がっている。G20の結束力弱体化を示すものだ。通商問題が大きなテーマとなる。まずは世界貿易機関(WTO)改革を断行し、多国間協議の原点回帰を目指すべきだ。

 これほど国際関係が波立つ中でのG20首脳会議は前例がない。相次ぐ参加国の2国間首脳会談にも注目が集まる。混乱の震源は米中2大経済国の激突だ。経済陣営が二つに分かれる「米中デカップリング」という言葉さえ登場したほどだ。

 G20の権威が揺らぎ、結束力が弱まる中で、喫緊の課題は機能不全に陥っているWTO改革を断行し、再び多国間協議を復活することだ。それにはまず、WTOの紛争解決制度を実効性のあるものにしなければならない。日本産水産物の輸入規制措置是正を韓国に求めた紛争処理で、日本は事実上の逆転敗訴となった。こうした問題も念頭に、制度的課題の改善を日米欧が先導して行う必要がある。併せてデジタル経済の国際的なルール作りも欠かせない。

 いま一つ注目したいのは、八つのG20関連公式会合の議論だ。経済団体(B20)、市民団体(C20)、シンクタンク(T20)、女性(W20)など。それぞれG20で議論されるテーマについて提言を発表している。

 C20では、地域課題解決に向けて協同組合の役割が明記された。5月に新潟市で開催したG20農相会合で言及された食料安全保障とも絡め、国際社会の安定に向けた協同組合の位置付けを再度位置付けるべきだ。T20は国連の持続可能な開発目標(SDGs)や気候変動で提言をまとめた。日本の農業団体もこうした切り口で、G20大阪会合に関わったらどうか。G20が米中の通商摩擦にばかり振り回されず、本来の地球的視野に立ち、持続可能社会の在り方で建設的な議論を深めるべきだ。

 G20は、当時のオバマ米政権が音頭を取り、2008年のリーマン・ショックに伴う世界的な経済破綻回避を狙い、先進国に加え中国など新興国が参加して始まった。世界全体の国内総生産(GDP)の約9割、人口も約45億人と6割を占める。中東、南米、アフリカと広範囲に及ぶ。一致すれば当面の課題解決へ大きく前進する一方で、利害対立が表面化すれば議論は空中分解し、G20の存在感そのものが問われる。初の議長国である日本の責任は重い。

 首脳会議前の経済閣僚会議は、「自国第一」を掲げる米国の反対で共同声明に「反保護主義」が盛り込まれなかった。28日からの首脳会議でどう具体的な打開が図られるのか。大きな鍵を握る米中首脳会談に世界の注目が集まる。さらに、日米首脳会談で貿易協定交渉に絡め早期妥結を迫るトランプ大統領の出方にも要注意だ。日本側が劣勢に立たされる2国間協議よりも、WTOを通じた多国間協議へ大きくかじを切るべきだ。 
 

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