[ゆらぐ基 持続への危機](1) 果樹 減産へ負の連鎖 放棄地は拡大の一途

荒廃園地で厳しい表情を浮かべる松下さん(愛媛県西予市で)

 国内の農業生産基盤が揺らいでいる。農業就業人口はこの20年間で半減し、耕作放棄地は40万ヘクタールを超える。目標とする食料自給率向上への道筋を政府はどう描くのか。国の基である農業現場の今を追った。

 「急傾斜地で高齢農家は耕作が難しくなっている。園地を管理しきれず、スプリンクラーを止める地区も出てきた」

 かんきつ生産量が日本一の愛媛県。県南部にある西予市の明浜町果樹同志会連絡協議会会長の松下治長さん(54)は産地の疲弊ぶりをこう語る。

 隣接する荒廃園はミカンの木をつる草が覆い、山林と見分けがつかない。高齢化などを受け、こうした荒廃園が近年目立つ。同市によると、2015年の同市明浜町の果樹栽培面積は350ヘクタールで10年前より2割減った。さらに同市農業委員会によると、13年度の調査で、山林化した再生困難な園地である耕作放棄地は100ヘクタールを超え「現在はさらに増えているだろう」(同委員会)という。

 耕作放棄地などは野生鳥獣のすみかとなり、近隣園地に被害が及ぶ。被害拡大で生産意欲が衰え、さらに耕作放棄地などが広がることが各地で発生。また、高齢化で園地を手放すケースも多い。こうした負のスパイラルで生産量の減少に歯止めがかかっていない。
 

後継ぎゼロも


 地域を代表するかんきつの集出荷施設である明浜共選は、出荷量の減少が目立つ。最盛期(1983年)に1万4390トンだったのが、18年産は8割減の2300トンに落ち込んだ。共選の取扱量の減少は、利用する農家1人当たりの使用料金の値上がりなどにもつながり、大きな課題だ。

 将来の不安は尽きない。「後継ぎがゼロの地区もある。現役世代が引退する20年後に残るのは一部の作りやすい園地だけだろう」。松下さんは産地の行く末を心配する。

 産地の再起を懸け、管内のJAひがしうわは、南予地域での他共選との広域選果を模索する作業班の設置を決めた。

 明浜柑橘(かんきつ)生産者協議会で委員長の中村正治さん(58)は「産地全体で共選運営を見直せば、明浜共選でやっていけると農家が奮起するかもしれない。明浜ブランドを守るためにも、作業班の設置が良い刺激になるはずだ」と希望を見いだす。
 

切り株だらけ


 リンゴ産地も深刻だ。主力産地の一つ、青森県弘前市相馬地区の山間部。リンゴ園の中に切り株だらけの園地が点在する。高齢化や後継者不足からやむなく廃園となり切り倒されたリンゴ園の跡だ。管内のJA相馬村の担当者は「廃園は少しずつだが増えている」と危機感を募らせる。

 同県によると、18年の放任園・管理粗放園は41ヘクタールで13年より7ヘクタール増えた。放任園などは、近年被害が増える黒星病の温床になりかねない。

 農家の労力不足に対応するため、同JAは「援農隊マッチング事業」として、栽培に必要な労働者の確保に力を入れている。市内のスーパーなどで人材を募集し、JAが中心となり農家と就労希望者との間で日時や就業先を調整している。JA農業振興課の齊藤大貴さんは「農家と作業員とのミスマッチをなくし、仕事を続けてもらうようにしたい」と期待する。
 

ミカン、リンゴ最小


 農水省によると、18年のミカンとリンゴの結果樹面積は、それぞれ3万9600ヘクタール、3万6200ヘクタールと取りまとめのデータがある1973年以来、過去最小だった。高齢化による労力不足に伴う廃園などが要因で、減少に歯止めがかからない。生産量も減少傾向で、ミカンはピークだった75年比8割減の約77万トン、リンゴも90年比の3割減の約76万トン。いずれも需要量を下回る状況だ。 
 

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