農業と教育は育てるという意味で地下茎のようにつながっている

 農業と教育は育てるという意味で地下茎のようにつながっている▼山形県高畠町で有機農業に取り組んできた農民詩人・星寛治さんの実感である。45年ほど前に作家有吉佐和子さんが『複合汚染』の中で紹介した。隣の田の稲穂と比べて見て、「堆肥で育った方は、どんなに力を入れても潰(つぶ)れない。こんなに違うものか、と私は茫然(ぼうぜん)とした」と、有機農業の威力に舌を巻いた▼毒性物質の複合がもたらす汚染の実態は、現代科学をもってしても解明できない点が多い。「環境汚染を食い止めることはできないのか」という難問に、一つの答えを示したのが有機農業だった。手探りで始めた星さんらの取り組みに多くの人々が共鳴し、視察は今も続く▼その星さんが、歩んできた道をまとめた本を出版した。『自分史 いのちの磁場(じじょう)に生きる』(清水弘文堂書房)。450ページに及ぶ大作である。書きおろしを含む13篇(ぺん)の詩も収録した。〈はるか受難の道さえ 肩を支えてあるいた やさしい不屈の火を わが内ふところにもやし たかはたの土を耕す〉(「待つ」)▼「有機農業は生き方そのものだった」。日記風につづられた自伝は、場当たり的な農政に振り回されながらも、昭和、平成、令和を貫いて生きてきた東北農民の不屈の記録と証言でもある。

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