食料安保問う参院選 制裁に揺らぐ世界市場 特別編集委員 山田優

 食料の安全保障に消極的な人は「豊かな国はいつでも市場から買える。日本が高いコストを掛けて作る必要はない」と語る。起きそうもないことを取り上げ、不安をあおるのは「オオカミ少年だ」と非難する。

 ところが、最近、世界各地で、いつでもモノが買えるという見方を覆す事件が相次ぐ。

 日本政府は先週、韓国向け半導体関連3物質の輸出管理を厳しくした。韓国が輸出管理を適切にしなかったこと、徴用工問題などで信頼関係が損なわれたことの二つが理由だ。実質的には「韓国がけしからん」ということだろう。3物質は日本のシェアが大きく、輸入に依存する韓国企業は打撃を受ける見込みだ。

 また、ロシアから防衛用ミサイルを購入するトルコに対し、米政府は約束していた高性能戦闘機F35を「売らない」姿勢に転じた。トルコのエルドアン大統領は「既に代金の一部は支払い済みで、引き渡し拒否は強奪だ」と地元紙に語った。やはり「ロシアの武器を買うのはけしからん」とトランプ米大統領が思ったからだろう。

 国益が絡むと国家は遠慮なく制裁する。特にトランプ政権は、安全保障を振りかざし、あちこちで関税を引き上げるなどやりたい放題だ。気に入らない相手には「脅し」をかける。恥ずかしくなるほどのもてなしでトランプ氏のご機嫌を取ってきた日本も例外ではない。

 日本の農産物輸入(2017年)6兆4000億円の中で、米国は1兆5000億円を占める。日米政府は「食料は信頼できる同盟国の米国から買うのが一番安全」と語ってきたが、これも雲行きは怪しい。

 水面下で日米間の農業交渉が進んでいる。日本側は選挙を理由に合意を8月以降に持ち越してもらい、米側は決着を遅らせた分だけ期待を膨らます。大幅な市場開放は、異例なほど低い食料自給率を、さらに押し下げる。小手先の対策や輸出振興に効果があるとは思えない。

 「カネさえ出せば市場からいつでも何でも買える」というお題目を信じて将来に禍根を残すか。それとも農産物市場開放に反対の立場を貫くか。食料安全保障は参院選の大きな争点だ。
 

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