西日本豪雨被災地 「届け出より流木撤去を」 ため池新法対応 農家、行政困惑  

ため池に続く川には流木が残され、ほとんど水が流れていない。農家は「放置すれば濁流が下流に押し寄せる」と心配する(広島県東広島市で)

復旧遅れ 管理者特定…


 農業用ため池管理保全法の7月の施行を受け、ため池の多い西日本豪雨の被災地が対応に苦慮している。同法はため池の管理者や所有者に対し、施行から6カ月以内に都道府県への届け出を義務付ける。ただ、現場ではため池に続く河川などが土砂に埋もれたままで農業用工事が進んでいない。自治体や農家からは「復旧半ばで管理者を特定するのは厳しい」「届け出より流木の撤去が先だ」といった声が出ている。

 流木が残されたままの河川や農地が各地で目立つ広島県東広島市。同市のため池は4171で県内で最も多い。

 農家100戸が活用する「滝原池」。昨年の西日本豪雨で決壊も破損もしていない。しかし、放流設備の余水吐きやため池に続く河川などに流木がたまったままだ。地域の農家で話し合い、行政に撤去の要請をするものの、工事は進んでいない。

 管理する農家の西山正さん(72)は「流木が手付かずで、次に大雨が来たらため池の貯水があふれ、命に関わる」と不安視する。米農家の平本隆登さん(66)は「ため池新法で現場に管理対策を任せれば決壊による災害が防げるわけではない。届け出対応より、流木の撤去を優先してほしい」と訴える。

 同市によると、ため池など農業用工事の発注は件数が多く、災害復旧の中でも特に大幅に遅れている。工事発注に必要な測量、再査定を豪雨発生から1年たった今、取り掛かっている状況だ。同市は「復旧工事がまだの中、4000を超すため池を全て調べ、届け出を出してもらう作業を年内に完了させなければならない」と、煩雑な作業を前に途方に暮れる。

 県のため池は1万9772。同法は所有者に都道府県への届け出を求めるが、実質的な事務は市町が担う。県内各自治体の担当者は「管理者を地元と丁寧に話し合って調べ尽くさなければならず相当時間がかかる」(三原市)、「管理台帳を見ても亡くなられている農家がいる」(廿日市市)などと苦慮する。

 法の対応は被災地共通の課題だ。岡山県は「届け出が必要なため池かどうかを調べ、管理者や所有者を特定するのは大変な作業。災害復旧の中、市町村に協力してもらうしかない」と困惑する。

 農水省によると、ため池は全国で16万6638カ所。兵庫、広島、香川など西日本で多い。同法は、西日本豪雨などでため池の決壊被害が相次いだため、管理を明確化しようと制定。同省は防災、減災と農業用利用の両立を目指す方針だ。同省は「法律で(届け出は)6カ月以内と決まっている。安全性確保に向けて重要な届け出なので進めてほしい」と呼び掛ける。

<メモ> 農業用ため池管理保全法

 所有者らに都道府県への届け出に加え、補強対策など管理の努力義務を課す。国や自治体が所有者らに財政や技術面を支援するとも明記した。施行日(7月1日)から6カ月以内に所有者は都道府県に届け出をしなければならない。行政はハザードマップやデータベースの作成も進める。
 

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