[2019参院選] 改憲の是非 国の在り方問う分水嶺

 憲法改正の行方を占う選挙戦である。自民党は改憲を前面に掲げ論戦を挑む。「改憲勢力」で発議に必要な3分の2を獲得できるかが焦点だ。安倍晋三首相にとっては、選挙後も求心力を維持し悲願の改憲に踏み切れるか、政権の浮沈がかかる。改憲の是非を含め、この国の在り方を問う一票となる。

 選挙戦では、安倍首相の改憲に懸ける意気込みが突出している。自主憲法制定は、自民党の党是であり、総裁として2020年の改正憲法施行を目指す。だが衆参で発議に必要な3分の2議席を持ちながら、両院の憲法審査会は「開店休業」状態で、審議の停滞にいらだちを隠さない。

 首相は「憲法論議をする政党か、責任を放棄して議論をしない政党かを選ぶ選挙だ」と野党を挑発する。対する立憲民主党など主要野党は、9条への自衛隊明記を掲げる自民党の改正案に反対で足並みをそろえる。集団的自衛権を巡り「解釈改憲」を強行した安倍政権下での憲法論議に抵抗感を示す。

 ただ野党でも共産・社民党の改憲反対強硬派から、「未来志向の憲法論議」を唱える国民民主党、「教育無償化や統治機構改革」などを訴える日本維新の会の柔軟派まで立ち位置は違う。しかも与党の公明党は9条改憲に一貫して慎重姿勢だ。

 定数245議席の参院で3分の2を維持するには、非改選の「改憲勢力」と合わせ86議席獲得が必要となる。高いハードルだけに首相は論戦の中で、維新や国民民主に秋波を送り、選挙後を見据える。

 首相が前のめりになるほど、国民との乖離(かいり)もあらわになる。今国民が政治に求めているのは、各種世論調査を見れば、家計に直結する景気対策や安定的な社会保障であり、改憲の優先順位は低い。それは自衛隊の社会的認知度や合憲性から見ても、緊急性が高い争点とみていないからだろう。

 憲法は本来権力の暴走を縛るものだが、この間の政権運営は1強ゆえの専制的な振る舞いが目立った。立憲主義にもとる安倍政治への不信も底流にあるだろう。拙速な改憲発議で国民を二分する前に、与野党の信頼関係を築き、静かな論議の環境を整えることが先決だ。国民投票法、選挙制度、解散権などの在り方を巡る議論から始め、共通の土俵づくりを求める。スイスのように食料安全保障を憲法に明記した例も参考になる。

 憲法は国民のものだ。だから国民投票にかけられる。社会環境や価値観の変化を受け、論議を深めることに異存はない。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3原則を守りながら、新時代の憲法像を探るために国民ももっと関心を向けよう。

 憲法を政争の具にしてはならない。為政者の政権維持の手段や政治的遺産のためのものでもない。参院選の結果は、この国の憲法論議の分水嶺(れい)となることを肝に銘じたい。 
 

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