豚コレラ 9府県養豚協会長 ワクチンの是非 説明を 本紙緊急調査

 豚コレラの感染農場が相次ぎ、感染した野生イノシシの分布が広がっていることを受け、日本農業新聞は、発生や隣接する9府県の養豚協会の会長らに現状や政府への訴えなどを聞き取る緊急調査をした。豚へのワクチン投与を求める意見の他、共通して農水省にワクチン投与によるメリットやデメリットなど丁寧な説明を要望する声が出た。感染の恐怖と戦いながら衛生管理を徹底しても発生に歯止めがかからず、現場には焦燥感が高まっている。
 

見えぬ終息…現場は「切望」


 半数の豚が殺処分された岐阜県養豚協会の吉野毅会長は「日本最高レベルの衛生対策をしている自信はあるが、防げない。限界だ。今にも大粒の涙が出るほど心が壊れている」と疲労する。最初に感染が分かってから10カ月が過ぎた。終息の兆しは見えず、県内全農家が精神的に追い詰められている。

 近隣県にも緊張感がみなぎっている。感染したイノシシが11日時点で4頭発覚した三重県養豚協会の小林政弘会長は「衛生管理基準を守れと指示する国と、恐怖におののく現場との溝が大き過ぎる。衛生管理をやり尽くしても発生する岐阜や愛知の実態を見て皆、びくびくしている」と明かす。7月に感染イノシシが見つかった福井県養豚協会の相馬秀夫会長は「殺処分した農家の思いを考えると言葉がなく、自分たちも切羽詰まっている」と窮状を訴える。

 吉野会長は「国の水際対策が甘い中、なぜ岐阜に責任をなすり付け、ワクチンを打たないのか」と水際対策の徹底やワクチン投与を求める。吉野会長の他、複数の会長が豚へのワクチン投与を切望する。

 感染したイノシシが広がる中で同省が提唱する早期出荷に疑問の声も相次ぐ。静岡県養豚協会の中嶋克巳会長は「早期出荷してもイノシシを考えると一歩踏み出せない。今、発生したら終わり。発生していない静岡でも農家は疲弊している」と語気を強める。全大阪養豚農業協同組合の川上幸男組合長は「早期出荷を現場に求めるなら再開対策をセットで考えなければ農家は守れない」と訴える。中嶋会長も川上組合長も、2010年に宮崎県で発生した口蹄(こうてい)疫は4カ月で終息したことを踏まえ「豚コレラで初動を誤った農水省の責任は大きい」と感じる。

 各県から共通して挙がるのが、同省に丁寧な説明を求める声だ。愛知県養豚協会の小林功理事長は「全国で順次、説明会を行う必要がある」と強調。豚へのワクチン投与では、科学的な根拠に基づくメリットやデメリットなどを丁寧に説明してほしいと指摘する。滋賀県養豚推進協議会の森本雄一会長は、相次いで感染イノシシが見つかっていることから「危機のステージは大きく変わった。明日はわが身」とした上で「農水省の説明不足が際立つ。衛生管理の不備を言うなら発生農場の課題点を各地にフィードバックしなければ教訓は生かせない」とみる。

 各県とも、消毒の徹底や畜舎への出入りの厳重管理、畜舎へのフェンス設置など衛生対策に時間と費用を投資し、厳重な対策を急ぐ。ただ、費用や作業時間がかさむ一方で対策に終わりが見えず、複数の会長から「このままでは養豚業が消える」と悲痛な声が出る。 

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