[2019参院選] 老後の安心 医療や介護含め道筋を

 「いつまでこの農地と地域を守っていけるのか」。農家の深いため息が聞こえる。先の見えない不安は、年金問題にとどまらない。急速な高齢化と人口減が農村を直撃し、医療・介護の人員不足も顕在化する。老後の課題をどう解決し、農村の未来図を描くのか。各党は総合的な処方箋を示すべきだ。

 「ずっと働き続けなければならないのか」。生きる上で不可欠なお金。各種の調査でも、老後の最大の不安は「お金」であることが示されている。ただ公的年金だけで老後を賄うことは難しくなっている。厚生労働省が示す夫婦の受給モデルでは、厚生年金なら月額22万円、国民年金なら同13万円。これだけでは家計が成り立たない。

 年金収入の不足分は、預貯金などを取り崩すことになる。厚生年金などを受け取る夫婦の無職世帯は、毎月平均で約5万円の赤字となる報告書がある。30年で約2000万円が必要という。いわゆる老後2000万円問題だ。多くの農家が加入する国民年金はもっと深刻だ。農業者年金などに加入していなければ、5000万円が必要との指摘もある。

 老後も働き続けることに意欲的な人は少なくない。農業には定年がない。とはいえ、健康であり続けることが大前提となる。ここに大きな問題が待ち受ける。医師数は近年、国内全体では増えているが、都市部に偏り農村部は減っている。診療科の閉鎖に追い込まれる地方病院も少なくない。多くの農村で無医村化が進みかねない。

 総務省の人口動態調査によると、今年1月1日の日本人の人口は前年比43万人減の1億2477万人。東京一極集中に歯止めがかからず、地方の人口減が目立つ。商店は閉まり、公共交通機関も撤退。担い手を迎える魅力が次第に農村から失われ、コミュニティーの存続さえ危ぶまれる。厳しい実態を直視した総合的な対策がない限り農村部での老後の安心は担保できない。

 今回の参院選で年金は、大きな争点となっている。各党は公約で、年金受給開始時期の選択肢の拡大、低年金者への生活支援給付金、年金生活者の医療・介護などの自己負担額への上限の設定などを掲げている。医師の偏在対策、介護・福祉人材の確保の必要性も各党は示している。だが論戦はかみ合わず、有権者に十分な選択肢を提示するに至っていない。

 各党の代表や候補者が声高に訴えるのは、「日本の明日を切り拓(ひら)く」「令和デモクラシー」「家計第一」「希望と安心の日本を」などのスローガン。肝心な政策について理解は深まっていない。これでは農地や農村をどう守り、次世代にバトンタッチすればいいのか、見えない。

 農村の老後の暮らしはいずれ都市部を含めた日本の縮図となる。農村、地方から老後の安心を確保することが喫緊の課題であり、各党の責務だ。

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